米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ、TI)の日本法人(日本TI)は2021年5月17日、電気自動車(EV)のパワートレーン部品に関する記者説明会を開催した。車載充電器やDC-DCコンバーター、インバーターといった部品を一体化することで、パワートレーンの体積やコストを最大で50%削減できるとの見方を示した(図1)。
「現在、ガソリン車とEVの間には1万2000ドル(1ドル=110円換算で132万円)のコスト差がある。EVを普及させる上で、パワートレーンの更なる統合が重要になる」。こう語るのは、TIでパワートレーン部門を統括するKarl-Heinz Steinmetz(カール・ハインツ・スタインメッツ)氏(オートモーティブ・システム事業ワールドワイド・オートモーティブ・パワートレイン部門ゼネラル・マネージャ)である。
車載充電器やDC-DCコンバーター、インバーターは現状、個別の部品として車両に搭載されることがある。スタインメッツ氏によると、これらを1つの筐体(きょうたい)に収めて統合する動きが加速しつつあるという(図2)。利点は、設計が簡素になることで部品点数が減り、コストを削減できることだ。筐体の金属材料や冷却用のパイプなどを少なくできる。
日本TIによると、統合型パワートレーンの主流は車載充電器とDC-DCコンバーターを組み合わせること。さらに、インバーターや配電ユニット、電池管理システムも加えて一体化することで、「パワートレーンの体積や製造コストを半減できる」(同氏)という。
一方で課題もある。従来、各パワートレーン部品には個別にMCU(Micro Control Unit)が搭載されていた。これらを統合化すると、同筐体内の複数の機能を1つのMCUで管理することになる。その結果、各部品の相互依存性が高まり、アルゴリズムが複雑化するという。
一体化したパワートレーンの市場投入で先行するのは中国である。例えば、中国の1次部品メーカー(ティア1)である深セン威邁斯新能源(Shenzhen Vmax New Energy)は、11kWの車載充電器とDC-DCコンバーターを一体化したユニット、さらに120kWのインバーターも加えて一体化したユニットを開発済みだ。21年4月に開催された上海モーターショーでも、いくつかの会社が統合型のパワートレーンを披露したようだ。