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 東京大学とNECなどは2021年5月24日、量子コンピューターなどを扱える人材育成のため、同大学に「量子ソフトウェア」寄付講座を設置すると発表した。量子コンピューターを使った量子機械学習手法の研究や、量子アプリケーションの開発を目的とする。「量子コンピューティングによる真のイノベーションの創出には、多くのブレークスルーが必要だ。新しい量子コンピューターのアーキテクチャーの提案などで実社会問題の解決に貢献できる」と同講座を進める東京大学 大学院 理学系研究科 教授の藤堂眞治氏は意気込む。

 「量子ソフトウェア」寄付講座を東大に設置するのは、NECなど9者だ。NECや富士通といった大手電機メーカーに加え、三井住友フィナンシャルグループといった大手金融系企業、NTTグループのNTTデータや住友商事グループのSCSKといった大手システムインテグレーターも参画する。講座の開設は21年6月から24年5月末までの3年間を予定する()。

図 9者が連携し寄付講座「量子ソフトウェア」を開始
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図 9者が連携し寄付講座「量子ソフトウェア」を開始
東京大学では2021年度を試行的な位置づけとして、学生向けのセミナー形式での講義や社会人向け講座、シンポジウムなどのイベントの実施を予定する。22年度から本格的に講座を開始する予定(出所:NEC)

 寄付講座を設置するのは量子関連の市場が今後、大幅に拡大すると見込まれるからだ。矢野経済研究所によれば、量子コンピューターの国内市場規模は25年度には20年度の約7倍の430億円、30年度には同約37倍の2300億円に達すると予測される。

 量子人材の需要が高まる一方、日本は、米国や中国と比べて、人材の層の厚さで大幅に後れを取っているといわれる。「1社だけで取り組んでいてもブレークスルーは起こりづらい。各社が連携すれば、今後必要となる量子ネーティブを獲得できると考えた」と同寄付講座に参画するNECの広報担当者は説明する。

 同寄付講座は大学生から社会人までを対象に、21年度から試験的にセミナー講義などを実施する。22年度からは本格的に講座を開始する予定。量子計算などへの応用が期待される物性物理学分野の計算手法「テンソルネットワーク」や従来の機械学習モデルを量子計算に置き換える「量子機械学習」などを教育・研究する。