セイコーエプソンは、DMOS-CMOS混載プロセスのASIC事業を始める ニュースリリース 。電源やモーター駆動に使う高耐圧・大電流のDMOS†と、論理処理を担う低消費電力なCMOSを1チップ化することで、機器の小型化や電力効率向上に寄与できるとする。新製品は、IO-Linkなどの通信送受信回路、高電圧スイッチ、スイッチング電源、制御機能を内蔵したモータードライバー、モーター駆動用Hブリッジといった広い用途に向くという。
同社の半導体事業は、腕時計向けCMOS IC内製化を機に1969年に始まった。82年にCMOS ASICの事業を開始した。「富士通に次いで国内で2番目にASIC事業を始めた」(同社)。ASIC事業の規模は明らかにされていないが、最近は、売り上げがほぼ横ばいだという。今回、DMOSを含めることで、「ASIC事業の売り上げを右肩上がりにしたい」(同社)。同社はDMOS ICを、社内の機器事業向けに2015年初頭から内製してきた。プリンターやプロジェクター、デジタル捺染(なっせん)機などに搭載されている。
同社によれば、DMOS-CMOS混載ASIC事業はありそうでなかったものだという。「特定顧客向けに大手ファウンドリーや他の半導体メーカーがアナログとデジタルを混載したCMOS ICを造ったり、バイポーラー専業のファウンドリーがディスクリートや小規模ICを造ったりする例はあるものの、今回の新製品のような規模のCMOSロジックとDMOSアナログを混載したASICは他社では見たことがない」(同社)。
新製品の強みは希少性だけではないという。同社のDMOSプロセスは、高い耐圧を維持しながら、一般的なMOSプロセスに対してオン抵抗を50%以上低減しており、電力効率が高い。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(Environment Social Governance)重視の追い風を受け、新製品の引き合いが増えることを同社は期待する。また、DMOS、CMOS共に、酒田事業所/東北エプソン(山形県酒田市)の工場で製造できるため、海外ファウンドリーへの製造受託とは異なり、安定的な供給が可能なことも、新事業の優位点という。