全1229文字
PR

 「松下幸之助の水道哲学は、90年を経た今でも前時代的ではない」——。2021年6月にパナソニック社長に就任するCEOの楠見雄規氏は、同年5月27日に開いた記者説明会で経営方針を語った。創業者の松下幸之助が提示した経営理念「水道哲学」が現代にも通じることを強調し、「モノ」と「心」の豊かさにつながる事業を展開していく姿勢を示した。具体的には、2030年までに全事業所のCO2排出量を実質ゼロにして環境問題に貢献する。

パナソニック CEOの楠見雄規氏
[画像のクリックで拡大表示]
パナソニック CEOの楠見雄規氏
(出所:オンライン説明会の動画をキャプチャー)

 パナソニックによると、水道哲学は「生産に次ぐ生産をもって貧乏を克服し、富を増大する」理念のこと。つまり、人々が水道水のように手軽に商品を入手できる大量生産社会を目標とする。ただし、これには続きがある。松下幸之助は、いくらモノが充実しても、それだけでは「理想の社会」を達成できず、「人々の精神的な安定」も同等に大事だと主張する。

約90年前の水道哲学を継承
[画像のクリックで拡大表示]
約90年前の水道哲学を継承
(出所:オンライン説明会の動画をキャプチャー)

 現CEOの楠見氏は、松下電器時代からのこうした「物心一如」の経営こそがパナソニックの特色であり、果たすべき使命だと強調した。「社会課題に正面から向き合い、現在と未来の不安を払しょくする」(同氏)。

 そこで同氏が最優先の課題として取り上げたのがCO2の排出削減だ。「自社工場やオフィスのCO2排出削減はもちろんのこと、エナジー事業や現場プロセス事業、燃料電池事業など、サービス開発によっても環境負荷を軽減する」(同氏)。

 30年のCO2排出量ゼロに向けた取り組みとして、次の3点を挙げた。①自拠点での省エネの加速、②自拠点での再生可能エネルギーの利活用、③再生可能エネルギーの調達である。②については、「太陽光や水素の利活用を進めて、再生可能エネルギーのみで稼働する拠点を積極的につくる」(同氏)とする。「現在までにグローバルの5拠点で達成した。22年4月からは、燃料電池を生産する滋賀県の草津工場も加わる予定だ」(同氏)。

CO2排出量ゼロに向けたパナソニックの取り組み
[画像のクリックで拡大表示]
CO2排出量ゼロに向けたパナソニックの取り組み
(出所:オンライン説明会の動画をキャプチャー)