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 ヤマハ発動機は、受託開発中であるEV用電動モーターを自社製品にも搭載する予定であることが分かった。当初は試作モーターを社外から受託開発する事業向けだったが、適用範囲を広げた。受託開発と社内展開の2軸で、幅広いモビリティー製品に搭載する可能性を探る。

 同社は、2020年2月に発表した最高出力35kWの電動モーターを自社製品に搭載する予定だ(図1)。モーター開発の責任者を務める、同社技術・研究本部AM開発統括部AM第2技術部長の原隆氏は「搭載車種など詳細はまだ非公開だが、さまざまな製品に共通で使えるモーターの強みを生かして検討している」と意気込む。

図1 最高出力35kWの電動モーターユニット
図1 最高出力35kWの電動モーターユニット
(出所:ヤマハ発動機)
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 また、21年4月に発表した最高出力350kWの電動モーターについても、自社製品に搭載する可能性があるという(図2)。開発当初は電圧800Vで使うことを想定していたが、同電動モーターは電圧を落としても高い出力を発揮できる。この利点を生かし、高電圧では使えないが高い出力が要求されるような自社製品に搭載することを検討していくという。

図2 最高出力350kWの電動モーターユニット
図2 最高出力350kWの電動モーターユニット
(出所:ヤマハ発動機)
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 ヤマハ発が電動モーター事業を加速させるのは、脱炭素の潮流を受けてエンジン事業の先行きが不透明になりつつあるからだ。原氏は「当社の豊富なエンジンのラインアップもかなり減るだろう」と危機感をにじませる。脱炭素というエンジンへの逆風を追い風に変えるべく、電動モーターの外販や社内展開を推し進めたい考えだ。

 試作開発の受託については、高出力帯のモーターの少量生産に対応できることを訴求していく。高価格のスーパーカーなどに複数のモーターを搭載する形を想定しており、年間100台分ほどの供給でも事業として成り立つという(図3)。

図3 最高出力350kWの電動モーターユニットを4機搭載したイメージ図
図3 最高出力350kWの電動モーターユニットを4機搭載したイメージ図
最高出力350kWの電動モーターユニットは、1台の車両に複数機を搭載することを前提に開発した。最大電圧800Vで使用可能。(出所:ヤマハ発動機)
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 ヤマハ発は電動モーターを、自動車向け製品・技術コンセプトブランド「αlive (アライヴ)」の1つ「αlive EE (エレクトリックエンジン)」として、オンラインで開催中の「人とくるまのテクノロジー展2021オンライン」(21年5月26日~7月30日)に出展している。