「電気自動車(EV)の充電設備や燃料電池車(FCV)の水素ステーションの設置数を目的にすべきではない。数を目的にすると、設置しやすいところが選ばれ、設備の稼働率が落ちる可能性がある」。
日本自動車工業会(JAMA)会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)は、2021年6月3日にオンライン開催した会見でこのように述べ、充電設備や水素ステーションの設置にあたっては、自動車メーカーの知見を活用してほしいとの意向を示した(図1)。
政府の成長戦略会議は21年6月2日に、今後の新たな成長戦略案を公表した。その中で、すべての新車を35年までにEVやハイブリッド車(HEV)、FCVなどの電動車両にするため、インフラ(充電設備や水素ステーション)の整備目標を示した。
具体的には、30年までにEV用の充電設備を現在の約5倍の15万基に、FCV用の水素ステーションを同約6倍の1000基程度に増やすとした。15万基の充電設備のうち3万基は急速充電設備である。
こうした政府の計画案について豊田氏は、「普及計画が打ち出されたことはありがたい」としながら、設置数を目的にすることについては懸念を示した。都市部のクルマのユーザーは、月決め駐車場や立体駐車場などを利用している人が多い。これらのユーザーは、自宅から離れた場所で自家用車を保管している。
豊田氏は充電設備や水素ステーションの設置にあたっては、こうしたユーザーに配慮する必要があるとし、その際は「自動車メーカーをあてにしてほしい」と述べた。
具体的には、コネクテッド技術を活用すれば、電動車両が多く走る場所や多く集まる場所を特定できる。このデータを使えば、「充電設備や水素ステーションを、必要な場所に効率的に設置できる」とした(図2)。
なお、豊田氏は今回の会見において、「6月3日に開催した自工会の理事会で、次回の東京モーターショーを、23年にリアル開催することを決定した」と述べた。「Green&Digital(未来のモビリティー)」をテーマに、「他産業を巻き込んだオールインダストリーのイベントにしたい」(同氏)と強調した。