フランスMichelin(ミシュラン)はレース用タイヤの脱炭素化を進める。2021年6月1日、オンライン開催の自社主催サミット「Movin’On Summit 2021」で、環境に良い持続可能な材料比率を46%まで高めたレース用タイヤの開発を発表した。高性能品とし、24時間耐久レースの燃料電池車(FCV)部門での装着を想定する。
タイヤは一般に、天然ゴムや合成ゴム、カーボンブラックやシリカなどの補強材、加硫用の硫黄など、200種類以上の材料で製造している。中でも天然ゴムは質量比約30%、合成ゴムは同20%と比率が高い。
開発品は持続可能な材料の1つである天然ゴムの含有量を増やした。天然ゴムは石油由来の場合の合成ゴムに比べて、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量が数分の1とされる。天然ゴムの比率を増やせば合成ゴムを減らせて脱炭素に貢献できる。
さらに同社は使用済みのタイヤから回収したカーボンブラックを再利用。加えて、オレンジやレモンの皮、ひまわり油、松の樹脂、空き缶から再利用したアルミニウム合金材などを使用して環境への配慮を強調する。
50年カーボンニュートラルへ
同社は製造するタイヤの持続可能な材料比率を30年までに40%とし、50年までに100%にする目標を表明している。過酷な状況下で走るレースは、こうしたタイヤの壮大な“実験場”としての意味合いが強い。レースで性能を確かめて、将来的には乗用車用タイヤに類似する材料技術を転用していくとみられる。
タイヤでの目標値に加えて、同社は事業活動での脱炭素化も掲げている。30年には、工場における燃料の燃焼など事業者自らによる温暖化ガスの直接排出(Scope1)や、電力など他社から供給を受けたエネルギーの使用に伴う間接排出(Scope2)を合わせて、CO2排出量を10年比で50%減らしたい考えだ。そして、50年までにカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)達成を目指す。
今後の争点は、Scope1、Scope2以外の間接排出(Scope3)部分の脱炭素化だ。Scope3は調達する原料、製品の利用や廃棄などが対象になるため、持続可能な材料比率を高めたタイヤはより重要になる。