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 日野自動車は2021年6月9日、小型電気自動車(EV)バス「ポンチョ Z EV」を22年春に市場投入すると発表した。これまで一部地域向けの限定販売にとどまっていたが、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)需要の拡大を受け、車両を刷新して本格的に発売する。EVのため振動や騒音が小さく、車格の小ささと相まって住宅街を走りやすい。

日野自動車の小型EVバス「ポンチョ Z EV」
日野自動車の小型EVバス「ポンチョ Z EV」
(出所:日野自動車)
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 車両質量は約8tで、寸法は全長6990×全幅2090×全高3060mm。搭乗可能な人数は座席配置によって異なるが約30人とする。容量105kWhのリチウムイオン電池パックを搭載し、最高出力161kWの駆動用モーターで走行する。1充電当たりの航続距離は200km前後とみられる。

 電池容量や航続距離といったスペックは、中国・比亜迪(BYD)が日本市場に投入している小型EVバス「J6」と同水準だ。実は、日野が発売する小型EVバスはBYDからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて実現するもの。ベース車はほぼ同じ車両ということになる。

 日野とBYDの関係性は既に深い。両社は戦略的提携を結び、21年中に50%ずつを出資して商用EV開発の新会社を中国に設立する。日野の親会社であるトヨタ自動車もBYDと研究開発会社を設立済みである。

数年前倒して投入

 日野は商用車の電動化を加速していく。「今回(22年春に投入する小型EVバス)はOEMだが、今後は自社開発に切り替える可能性もある」(日野の広報担当者)。実際、22年初夏に自社開発の小型EVトラック「デュトロ Z EV」を発売する予定だ。

 こちらは容量40kWhのリチウムイオン電池パックを車両中部の低床フレーム内に薄く敷き詰め、最高出力50kWの駆動用モーターで走る。航続距離は100km以上を目指す。床面の地上高を現行車から半減させて400mmとし、荷役作業や乗り降りをしやすくする。

 いずれの車両も当初の想定より前倒しての市場投入となる。日野社長の下義生氏は17年の就任当初「EVトラックの市場導入は2025~30年をイメージしている。まだ課題は多い」と話していた。

 他社の力を借りて早期の市場投入を目指すのか、それとも何としてでも自社で実現するのか。世界的な脱炭素化の動きが自動車メーカーを揺さぶっている。