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 既報の通り、トヨタ自動車が車載カメラの調達方針を転換した。これまではデンソーの製品を採用してきたが、新たにドイツZFの前方監視用カメラを採用する。今回、この次世代カメラの仕様が分かった。

 トヨタが方針転換した理由の1つが東芝にある。東芝は2020年9月、画像処理チップ「Visconti」シリーズの開発中止を発表した。方針に変更がなければ、現在サンプル出荷中の「Visconti 5」が最終世代となる。困ったのが、Viscontiを採用するデンソーであり、そのカメラを調達するトヨタだった。

 トヨタが今後採用する車載カメラの最大の特徴は、イスラエルMobileye(モービルアイ)の画像処理チップを搭載する点(図1)。画像認識アルゴリズムを「ブラックボックス」として提供するモービルアイとは距離を置いてきたトヨタだったが、Viscontiの進化が見込めなくなった状況では方針を転換せざるを得なかったようだ。

図1 トヨタがZFとモービルアイのADAS(先進運転支援システム)部品を初採用へ
図1 トヨタがZFとモービルアイのADAS(先進運転支援システム)部品を初採用へ
ZFは前方監視用カメラの他に、77GHz帯のミリ波レーダーも供給する。(出所:ZF)
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 トヨタが今後採用するのは、モービルアイの画像処理チップ「EyeQ4」を内蔵するZFの前方監視用カメラ「S-Cam4」シリーズである。ZFは同シリーズのカメラを12社以上の自動車メーカーに納入しているという。

 ZFはS-Cam4シリーズに単眼カメラと3眼カメラを用意しており、ドイツBMWや日産自動車などは車種によって2つのカメラを使い分ける。BMWの基準は「手放し運転機能を搭載するか否か」(同社)だ。手放し運転機能を採用する車種には3眼カメラを使う。

 3眼カメラは、遠距離・中距離・近距離の状況を把握できるもので、単眼カメラやステレオカメラに比べて、より広範囲での障害物検知が可能だ(図2)。具体的には、遠距離を見るカメラは検知角28度で、検知距離は300m程度。中距離用カメラは検知角52度で、検知距離は120m程度。近距離用カメラは検知角150度で、検知距離20mである。

図2 ZFの3眼カメラ
図2 ZFの3眼カメラ
検知距離の異なる3台のカメラを搭載する。1個のEyeQ4で3台のカメラ映像を同時に処理する。(出所:ZF)
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 優れた検知能力を備える一方で、3個のCMOSイメージセンサーや光学レンズを必要とするためコスト面では割高になる。このため、BMWは「1シリーズ」のような小型車では単眼カメラを選び、手放し運転機能の採用を見送った。