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 ただし、この2020年に開発した構造では、高い耐圧のMOSFETの場合に、逆方向導通可能電流量が少ないという制限があった。そこで今回、この制限の緩和を狙って、20年開発の構造に改良を施した。改良は次の2点である。1点はセル(MOSFETとSBDの組み合わせ)寸法を25%縮小したこと。もう1点は電流拡散層(CSL)の構造を最適化したことである。

 2つの改良を施した構造で3.3kV耐圧のMOS FETを試作し、改良前の構造(すなわち2020年に開発した構造)の同MOS FETと比較した。その結果、+175℃における逆方向導通可能電流量が改良によって2倍になったことを確認した。また、室温における特性オン抵抗が約20%下がったことも分かった。一般に特性オン抵抗が下がると、信頼性に直結した指標である短絡耐量が下がってしまうが、改良後の構造では、短絡耐量が25%上がり(耐圧1.2kVのMOSFETの場合)、信頼性が向上することも確認できたという。

短絡耐量が向上
短絡耐量が向上
Device Bが今回の改良構造のMOSFETでDevice Aが昨年(2020年)に発表した改良前構造のMOSFET。一般に特性オン抵抗と短絡耐量はトレードオフの関係にあり、一方が良くなると他方が悪くなる。今回は両方が改善(オン抵抗が下がり、短絡耐量が上昇)したとする。耐圧1.2kVのMOSFETで比較。(出所:東芝デバイス&ストレージ)
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 同社は改良後の構造の詳細について、「PCIM 2021」(21年5月3日からオンライン開催)とパワー半導体の国際学会「IEEE International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs(ISPSD) 2021」(同5月30日からオンライン開催)において発表した。改良後の構造を採る耐圧3.3kVのSiC MOSFETを利用した、同社製品は21年5月にサンプル出荷を開始している*2

*2 関連記事:東芝、鉄道車両向けに3.3kV耐圧のSiC MOSFETモジュール