東京大学大学院工学系研究科の中尾彰宏教授と東京大学発ベンチャーであるFLARE Wireless、NECネッツエスアイは2021年7月から、ローカル5Gの実証利用を念頭に、企業や自治体向けに格安なソフトウエア基地局の提供を始める。中尾研究室が開発してきたソフトウエアベースの無線基地局装置を活用し、共同で事業展開する。格安なソフトウエア基地局を企業や自治体に提供することで、ローカル5Gの普及加速につなげる。
提供するソフトウエア基地局「FW-L5G-1」は、一般的なサーバー上で動作する。20年12月に拡張されたローカル5G向けの4.7G〜4.9GHzの周波数帯に対応する。価格は「基地局や置局設計、運用支援などすべて含めて2000万円程度。今後、どんどん安くしていきたい」(中尾氏)という。現状、数億円から数千万円かかるといわれるローカル5Gの導入と比較すると割安感がある。
割安に加えてもう一つ特徴とするのが、「準同期TDD」と呼ばれる新たな5Gの運用にいち早く対応している点である。
4.7GHz帯や28GHz帯などを使う5G通信は、TDD(時分割複信)と呼ばれる方式で、下り方向と上り方向のデータを時間軸上で瞬時に切り替えて送受信している。携帯電話事業者は下りと上りの比率を7:2などで運用しており、隣接する周波数帯を利用するローカル5Gも、干渉を抑えるために携帯電話事業者と同じ比率で運用する必要がある。