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 いすゞ自動車傘下のUDトラックスは2021年7月1日、大型トラック「クオン」に電動油圧式のパワーステアリング(パワステ)「UDアクティブステアリング(UDAS)」を初めて採用すると発表した(図1)。従来の油圧式のパワステの上部に電動モーターとECU(電子制御ユニット)を搭載し、低速で走る際の操舵(そうだ)を軽くした(図2)。

図1 UDトラックスの大型トラック「クオン」
図1 UDトラックスの大型トラック「クオン」
新しく開発した電動油圧式のパワーステアリングを採用する。(出所:UDトラックス)
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図2 クオンに新しく搭載する電動油圧式のパワステ
図2 クオンに新しく搭載する電動油圧式のパワステ
油圧式のパワステの上にECUを搭載した。UDトラックスの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 UDトラックスは、物流業界への間口を広げるために、女性や経験の浅い運転者でも操舵しやすい機能を導入する。後退や右左折の際には、回したステアリングホイールが自動で元の位置に戻るようにした。横風の条件下で、タイヤの動きを感知して操舵を補正し、直進的な走行を促す機能も用意した。

 こうした運転支援を可能にするのが2つのセンサーだ。UDASはステアリングホイール側と油圧式パワステの内部にセンサーを搭載している(図3)。前者は舵角(だかく)を、後者は舵角とトルクを1秒間に約2000回検知する。両者の情報から、車両の動きが運転者の操舵によるものか、路面やタイヤ側の影響かを判断する。これらの情報に速度や積載重量などのデータも加え、最適な操舵感覚になるようにECUがモーターを制御する。

図3 UDASの2つセンサーの搭載位置
図3 UDASの2つセンサーの搭載位置
ステアリングホイール側と油圧式パワステの内部にセンサーを配置する。UDトラックスの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 従来の油圧式のパワステは低速時に重くなり、高速時に軽くなるのが一般的だった。UDトラックスによると、これが運転者の疲労を招くという。同社はUDASの搭載車と非搭載車で、運転時のストレスや必要な集中力、操舵に使う筋肉の活動量を比較する実験をした。その結果、搭載車の方がこれらを示す数値が低くなる傾向を確認したという(図4)。

図4 UDASの搭載車と非搭載車を比較した実験の結果
図4 UDASの搭載車と非搭載車を比較した実験の結果
搭載車の方が、運転時のストレスや必要な集中力、操舵に使う筋肉の活動量が低くなる傾向を確認した。ステアリングホイールを握る際に使う屈筋には大きな差が見られなかった。(出所:UDトラックス)
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 UDASは、スウェーデンVolvo Trucks(ボルボ・トラック)が欧州で実用化した電動油圧式のパワステ「Volvo Dynamic Steering(VDS)」を流用したものだ。同社はVDSを、大型トラック「Volvo FH」などに採用している。

 UDトラックスはVDSを日本の道路環境に合わせて調整した。長い直線道路を走行する頻度が多い欧州のトラックに対し、日本のトラックは右左折が多い街中も走る。こうした物流環境の違いを考慮して、開発を進めたという。同社は21年3月まで、スウェーデンVolvo Group(ボルボ・グループ)の傘下だった。

 UDトラックスは、UDASを車線の逸脱防止機能と合わせたオプションとして設定し、46万円(税別)で提供する。搭載できるのは、「クオンカーゴCG」のうち後軸がエアサスペンションでホイールベースが7520mmの車両と、「クオントラクターGK」のうちホイールベースが3200mmの車両である。