三菱ふそうトラック・バスは2021年7月15日、配送計画システムの開発を手掛ける米スタートアップのWise Systems(ワイズ・システムズ)と業務提携したと発表した。今回の提携を機に三菱ふそうは21年内に、ワイズが開発したシステムの日本における販売を開始する。
同システムの販売によって、食品・飲料、宅配などあらゆる物流業務におけるラストワンマイル配送の効率化を目指す。同日に会見した三菱ふそう国内販売・カスタマーサービス本部で営業推進部部長の砥上健司氏は、「今回のシステムによって、ライトワンマイル配送が抱える課題を解決したい」と強調した(図1)。
ワイズのシステムは、配送管理用のPC(パソコン)と配送車両の運転者が利用するスマートフォンに専用ソフトウエアを組み込むだけで利用できる。同社が北米で提供しているシステムを、日本向けにカスタマイズしたものである。配送用車両にハードウエアを追加する必要はない。三菱ふそうの車両に限らず、他社の車両でも利用できる。
三菱ふそうトラックアジアコネクティビティデジタルサービス部長のピーター・ファイグラー氏は、「北米で7年の採用実績があり、高度な配送計画を作成できるワイズのシステムを選んだ」と述べた(図2)。
ワイズのシステムでは、配送計画の作成にAI(人工知能)技術と機械学習を使う。配送オーダーや配送用荷物、配送用車両、運転者といった配送に必要なデータを基に、AI技術を用いた「ルート計画アルゴリズム」によって配送ルートや配送用車両、その車両の運転者を選定し、最適な配送計画を自動で作成する。また、頻繁に利用しているルートなどを学習させることで、回を重ねるたびに、より効率的な配送計画を作成できるようにした(図3)。
作成した計画は、運転者のスマホに配信される。運転者はこの計画を基に、配送業務を行う。配送管理の担当者は管理用PCを通じて、車両の稼働状況や配送状況をリアルタイムで把握できる。運転者はスマホのアプリで配送ルートを確認したり、荷物の配達完了を担当者に通知したりすることができる(図4)。
これにより、配送用車両の走行距離の短縮や稼働率の向上、配送の遅延時間の短縮が可能になる。三菱ふそうによると、ワイズのシステムを導入している米国ユーザーの実績としては、走行距離を平均で15%削減、稼働率を20%向上、配送の遅延時間を最大で80%短縮した例があるという。走行距離の短縮は、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも寄与する。
なお、システムの導入コストについては、「初期費用として100万円以下、運転者1人当たりの月額利用料として5000円以下を計画している」(砥上氏)と言う。