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 現実世界をデジタルに転写する「デジタルツイン」分野で、米NVIDIA(エヌビディア)と米Apple(アップル)が手を組んだ。米Pixar Animation Studios(ピクサー・アニメーション・スタジオ)を加えた3社は共同で、3次元(3D)ファイル形式「USD(Universal Scene Description)」を拡張し、物理シミュレーション(演算)において、3Dモデルの物理特性を示す要素「リジッドボディー」に対応させた。これにより、剛体の衝突などをより正確にシミュレートできるようになるという。

 USDはもともと、ピクサーが映像制作向けに開発したもの。16年にオープンソース化し、現在では映像分野だけでなく、建築分野など他の分野にも広がっている。エヌビディアは、仮想空間内で共同作業を行うためのプラットフォーム(基盤)「Omniverse(オムニバース)」において、3Dデータを扱う標準形式としてUSDを利用している。

 オムニバースは、場所や機器に依存せずに、ユーザー同士で3D CGの制作やシミュレーションなどの作業を実行できるプラットフォームである。主要な用途の1つは、3D CG(コンピューターグラフィックス)の制作である。異なる種類の制作ツールを使っているユーザーでも、同一の仮想空間内で3D CGの制作を共同で、かつ同時に取り組むことができる。オムニバースのデータベース(DB)サーバー「Nucleus(ヌクレウス)」において、各ツールで制作された3DデータをUSD形式に変換して保管し、ツール間を横断した共同作業を可能にする。ただし、これまでUSDはリジッドボディーには対応していなかった。

(出所:エヌビディア)
オムニバースの利用イメージ
4人のユーザーがそれぞれ異なるパソコンを通じてオムニバース上の仮想空間にアクセスして作業している様子
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 エヌビディアは今回、USDをリジッドモデルに対応させることで、より広範な応用に適用しやすくした。分かりやすい例として、ビー玉を転がすゲームにおいて、ビー玉の重さや、ビー玉が転がるスロープの滑らかさなどの物理情報を表現できるとしている。

 エヌビディアによれば、同社とアップルはそれぞれ独自に、シミュレーションにおける物理現象の表現方法を模索していたという。その後、CGやインタラクション技術などの世界最大級の国際会議「SIGGRAPH」のコミュニティーメンバーだった両社がタッグを組んだ。USDを考案したピクサーも加えて、今回のUSDの機能拡張を実現した。応用先を広げるために、この機能拡張では柔軟性を高めたとする。例えば、開発者は目的に応じてソルバーを選択できるという。ゲームのようなリアルタイム性を重視する用途では、精度よりもスピードを優先したソルバーを選び、建築分野のような精度に重きを置く用途では、スピードよりも精度に優先したソルバーを選ぶ、といった具合だ。