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 台湾・鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)は2021年8月5日、台湾の旺宏電子(マクロニクス)から口径150mm(6インチ)ウエハー(基板)に対応した半導体工場を買収することを明らかにした。同工場で、鴻海は電気自動車(EV)向けにSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)のパワー半導体素子(以下、SiCパワー素子)を量産する。買収額は25億2000万台湾ドル(約100億円)で、21年中の取引完了を目指す。

調印式の様子
調印式の様子
(出所:鴻海)
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 鴻海は、20年10月に電気自動車(EV)のオープンプラットホーム構想「MIH EV Open Platform」を発表するなど、EV向け事業に注力している。その一環で、同社はSiCパワー素子の製造にまで乗り出す。同素子は、例えば車載充電器や、駆動用モーターを制御するインバーターなどで利用される。従来のSi(シリコン)パワー素子に比べて電力損失を大幅に削減できることから、車載充電器やインバーターの小型・軽量化を図れる。

 これまではコストが高いことから、一部の電動車両への利用にとどまっていた。だが、現在は以前に比べてコストが下がってきたことから、大手自動車メーカーはSiCパワー素子を積極的に採用する姿勢を見せている。例えば韓国Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)は、同社の電動車専用プラットホーム「E-GMP(Electric-Global Modular Platform)」で、ドイツInfineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)のSiCパワー素子を採用している。フランスRenault(ルノー)グループも、26年から生産する電動車両に向けて、SiCやGaN(ガリウムナイトライド、窒化ガリウム)といった化合物半導体を利用したパワー素子の供給で、伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)と提携している。

 SiCパワー素子を手掛ける半導体メーカーは多いが、車載用途で採用実績がある企業は限られる。このため、車載のSiCパワー素子において圧倒的な「勝者」が決まっておらず、鴻海にも勝機がある。同素子を利用することで、車載充電器やインバーターの差異化も図りやすい。こうした背景から、鴻海はSiCパワー素子を製造する決断を下したとみられる。

 口径150mmは、現在のSiC基板における主流のサイズである。鴻海は買収した工場で、SiC MOSFETを製造する考え。加えて、MEMSデバイスといったSi製品も手掛ける予定だとする。