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 米国のスタートアップ(新興)企業Sarcos Robotics(サルコス・ロボティクス)は2021年8月26日(米国時間)、同社が手掛ける遠隔操作ロボット「Guardian XT」を実際の作業現場に適用する実証に成功したことを明らかにした。22年末の発売に向けて、大きな一歩を踏み出した。同社はパワードスーツで米Delta Air Lines(デルタ航空)と協業していることで知られる。

サルコスの「Guardian XT」
サルコスの「Guardian XT」
(出所:サルコス)
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 サルコスは米University of Utah(ユタ大学)から1983年にスピンアウトして生まれた企業で、30年以上の研究開発実績を持つ。米Caterpillar Venture Capital(キャタピラー・ベンチャー・キャピタル)や米GE Ventures(GEベンチャーズ)、米Microsoft(マイクロソフト)、油田サービス大手の米Schlumberger(シュルンベルジェ)などが出資している。元は軍事用がメインだったが、最近では産業(BtoB)分野に向けて、作業現場や物流施設などで利用する遠隔操作ロボットやパワードスーツ、検査用ロボットなどを手掛けている。

 このうちGuardian XTは、クレーン車のかごに、人の代わりに上半身のロボットが配置されたもの。両腕のバージョンと片腕のバージョンがある。ロボットの両腕、あるいは片腕を使って作業を行う。地上にいる操縦者が、ロボットの頭部にあるカメラで捉えた映像を身に着けたヘッドマウントディスプレー(HMD)を見て周囲の状況を把握しながら、腕などの上半身に身に着けた装着型のコントローラー「SenSuit」でロボットの両腕を操作する。操縦者に対して、手に握った部分を通じて、フォースフィードバックをリアルタイムで提示できるという。

 ロボットは、片腕当たり100ポンド(約45.4kg)、両腕で合計200ポンド(約91kg)の物体を持てる。手首を含めた腕の自由度は7で、胴体の自由度は2である。動作温度範囲は-20~+46℃。120V、20AでのAC給電の他、ホットスワップ可能な2次電池(バッテリー)パックで駆動可能。バッテリーでの駆動時間は8時間を目標にしている。

 今回の実証では、大きく3つの用途でGuardian XTを利用した。第1に、電力設備を建設する企業との実証で、送電線の周囲にある木の伐採に利用した。第2に、材料メーカーとの実証である。化学工場内にある、高所のパイプの検査作業などに用いたという。第3に、石油・ガス企業との実証で、作業現場での建設作業に利用したとする。

 サルコスは、「Robotics-as-a-Service (RaaS)」と呼ばれる事業モデルを採る。顧客に対して、装置の配送から設置、メンテナンス、各種ソフトウエアのアップデートなどを実施し、その見返りとして月額料金を得る。例えば、Guardian XTの場合、月額5000米ドル(1米ドル=110円換算で55万円)を想定している。同ロボットの利用で作業員の数を半分にし、かつ20%高速に作業を行えるので、コストパフォーマンスに優れるとしている。