米Advanced Micro Devices(AMD)は、プロセッサーIC関連の国際学会「Hot Chips 33(米国時間の2021年8月22日~24日にオンライン開催)」 ホームページ に登壇し、現在量産中のMPUに搭載されている最新CPUコア「Zen 3」の詳細を説明した。この記事では、Zen 3コアのポイントを過去のZenコアと比較しながら紹介し、同じHot Chips 33で発表された米Intel(インテル)の次期MPUへのAMDの対応策を考察する。
AMDの講演タイトルは「AMD Next Generation Zen 3 Core」である。初代のZenコアは17年に登場した*1(図1)。18年登場のZen+は、内部の変更なしで製造プロセスを米GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)の「12 LP」に更新することで、若干の動作周波数引き上げを図った*2。
19年には、内部を大幅に見直すとともに製造プロセスを台湾TSMCがいう「7nm」に切り替えたZen 2が登場した*3。この製造プロセスを変えずに内部構造の改良を図ったのが20年登場のZen 3である*4。
関連記事 *1 インテルに対抗できなかったAMD、Ryzenでは何を変えたのか *2 『AMD、第2世代RYZENプロセッサーを2018年4月に投入』の2ページ目 *3 AMD、7nmで製造のデータセンター向けMPUとGPUを公開 *4 AMD、Zen 3アーキのデスクトップPC向けMPUを11月5日に発売TSMCがいう7nmプロセスには複数のバリエーション(N7、N7P、N7+、N6)があるものの、AMDは「7nm」というだけで、バリエーションの種類までは明らかにしていない。Zen 3では、Zen 2に比べてIPC(Instructions Per Cycle)を引き上げると共に、CCX(Core Complex)の構成をZen 2以前とは異なるものとすることで、性能の向上を図った(図2)。
Zen 3の実効処理命令数はx86換算で4命令/サイクル程度だが、全体的に効率を高めた設計となっている(図3)。例えば、分岐予測ユニットを2つに増やしたり、ロード/ストアユニットの強化、スケジューラーの効率化などを図った(図4)。
FPU(Floating Point Unit)はAVX256命令を同時に2つ処理できるようにした。こうした数々の工夫によって、IPCは最大19%向上したという。なお、19%の向上は、25種類のアプリケーションでの性能改善率の幾何平均とする(図5)。