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8コアが一体化

 もう1つ、Zen 2以前とZen 3とで大きく異なるのが、CCXである(図6)。

 Zen 2以前のCCXは4つのCPUコアとL3から成り、8コアの製品でも内部的には2つのCCXがインターコネクト「InfinityFabric」でつながる構成だった。Zen 2ではInfinityFabricのコントローラーが別のダイ(cIoD:I/Oコントローラーダイ)に実装されていた。このため、同じダイ内の2つのCCX間の通信が、別ダイのコントローラー経由になり、これによるレイテンシーが大きいという課題を抱えていた。

 Zen 3では8つのCPUコアが1つのCCXとなった結果、8コア以下の構成におけるマルチスレッドでのレイテンシーが大きく削減し、IPCの向上につながった。

図6●CCX(Core Complex)の違い
図6●CCX(Core Complex)の違い
Zen 2以前はL3が合計32Mバイトといっても、異なるCCXのL3のアクセスは極めて遅いため、実質的なL3は16Mバイトだった。Zen 3では、実質でも32Mバイトになった。大きなポイントである。(出所:AMD)
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 現在、Zen 3のCCD(Core Complex Die:CCXを集積したダイ)のL3キャッシュ容量は32Mバイトだが、それを96Mバイトまで増やせる技術「3D Vキャッシュ」が、21年6月にオンラインで開催された「COMPUTEX TAIPEI 2021」の基調講演で明らかにされた*5。32MバイトのL3キャッシュの真上に、64MバイトSRAMダイを積みTSV(Through Silicon Via)で接続する(図7)。これでCCX当たりのL3キャッシュを最大96Mバイトに増加できる。

関連記事 *5 AMDとTSMCが開発の3Dキャッシュ、21年中に高速MPUに搭載へ
図7●L3キャッシュを3倍に
図7●L3キャッシュを3倍に
「3D Vキャッシュ」と呼ぶ技術で、CCXの32MバイトのL3キャッシュの真上に、64MバイトSRAMダイを積む。これでCCXあたりのL3キャッシュを最大96Mバイトに増加できる。図中のCCDはCore Complex Dieの略で、CCXを集積したダイのこと。1つのダイに1つのCCXが搭載されているので、基本的に同じ。図中で半透明なものは、高さをそろえるためのシリコン製インターポーザーである。(出所:AMD)
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 2ダイ構成のデスクトップPC向けMPU「Ryzen 9」の場合、合計L3容量は192Mバイト。8ダイ構成のサーバー向けMPU「EPYC」では、768Mバイトの大容量L3が実現する。L3の大容量化による性能改善は平均15%とされている。COMPUTEXの基調講演では、3D Vキャッシュを搭載した製品を年内に市場投入することが表明された。これを「Zen 3+」と呼ぶことにする。

 なお、AMDがZen 3と呼ぶダイには2種類がある(図8)。1種類目は、デスクトップPC向けMPU「Ryzen 5000シリーズ」とサーバー向けMPU「第3世代EPYCプロセッサー」*6に搭載されているダイである。8つのZen 3コアと32MバイトのL3キャッシュを集積したダイで、デスクトップ向けMPUはそのダイ1~2個、サーバー向けMPUはそのダイを2~8個パッケージに収めている。

 2種類目は、モバイル(ノート)PC向けMPU「Ryzen 5000シリーズ・モバイル・プロセッサー」*7とデスクトップPC向けMPU「Ryzen 5000Gシリーズ」*8に搭載されているダイである。8つのZen 3コアと16MバイトのL3キャッシュ、さらに同社のVegaベースGPUコアとチップセット機能まで集積する。こちらはダイ1個がパッケージに封止されている。

関連記事 *6 AMD、サーバー向けMPU「第3世代EPYCプロセッサー」を発表 *7 AMD、Zen 3コアのノートPC用MPU「Ryzen 5000モバイル」 *8 AMD、Zen3アーキのデスクトップPC向けMPUにGPU混載品
図8●Zen 3コアを集積したMPU製品群
図8●Zen 3コアを集積したMPU製品群
左端の「Ryzen 5000シリーズ・モバイル・プロセッサー」はIntelのモバイル(ノート)PC向けMPU「第11世代Coreプロセッサー」(開発コード:Tiger Lake)と市場で互角に競っている。また、デスクトップPC向けやサーバー向けのMPUでも、Zen 3ベース製品のシェアが確実に上がっている。(出所:Intel)
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 AMDは今回紹介したZen 3コア集積のMPUと、3D VキャッシュでL3容量を増したZen 3+コア集積のMPUで、IntelがHot Chips 33と「Intel Architecture Day 2021」において詳細を発表した次期MPU*9、すなわちPC向け「Alder Lake」(開発コード名)とサーバー向け「Sapphire Rapids」(開発コード名)を迎え撃つことになるだろう。そして、TSMCがいう5nmプロセスで製造される「Zen 4」コアを集積したMPU製品を22年には市場投入し、先端品におけるIntelからのリードを広げるというのがAMDの狙うところである。

関連記事 *9 x86にも「big.LITTLE」の波、IntelがPC向け次期MPUで
図9●Zen 4コアは2022年に登場予定
図9●Zen 4コアは2022年に登場予定
Zen 4コアを集積するMPU製品は、TSMCがいう5nmプロセスで製造される見込み。(出所:AMD)
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