フィンランドの通信機器大手Nokia(ノキア)は2021年9月14日、米国の法律に抵触するリスクから、一時中断していた業界団体「O-RAN ALLIANCE」における技術作業を再開することを明らかにした。O-RAN ALLIANCEの理事会が同年9月13日、同団体への参加書類と手順の変更を承認し、米国法律に準拠するようになったことで、「一時停止しなければならなかった作業の再開ができるようになった。ノキアはO-RANに全力で取り組む」と、同社モバイルネットワーク部門プレジデントであるTommi Uitto氏が同社のブログで明かした。
O-RAN ALLIANCEは、昨今注目を集めている基地局オープン化の仕様をつくる業界団体だ。これまで難しかった異なるベンダー間の基地局装置の相互接続を実現するため、グローバルで共通のオープンインターフェースの策定を進めている。18年初頭に団体が立ち上がり、21年6月末には、世界の主要な携帯電話事業者のほか、基地局装置のビッグベンダーや新興ベンダーを含む約300社が加盟するなど一大勢力となっている。
そんなO-RAN ALLIANCEの作業をノキアが一時中断したことは21年8月末に判明した。ノキアは「一部のO-RAN ALLIANCEへの参加企業が米国のエンティティーリストに追加されたため、ノキアとしては同団体への技術的活動を一時停止することが賢明と判断した。O-RAN ALLIANCEがこの問題を分析し、解決策を見いだすまで待つ」とコメントしていた。O-RAN ALLIANCEには、米国が国家安全保障上の懸念があるとする中国企業が参加している。ノキアは同団体を通じて中国企業に協力することで、米国の法律に抵触するリスクを恐れたとみられる。
この問題はO-RAN ALLIANCEの作業停滞や、場合によっては通信の世界に地政学上の分断を招く恐れがあるとして、業界関係者の懸念を巻き起こしていた。問題発覚から数週間でO-RAN ALLIANCEが解決策を打ち出したことで、とりあえず最悪の事態を回避した格好になる。