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SiCは材料からモジュールまで手掛ける

 SiCを利用したパワー半導体素子(以下、パワー素子)は、従来のSi(シリコン)パワー素子に比べて損失が小さく、耐圧600~6.5kVといった中耐圧から高耐圧での利用に向く。この耐圧範囲で、特に近年期待されている用途が、ハイブリッド車や電気自動車(EV)といった電動車両への応用である。電動車両の駆動用モーターを制御するインバーターや車載充電器などで、「今後3~4年かけて、Siパワー素子からSiCパワー素子への切り替えが進んでいくだろう。中でもEVにとってSiCは非常に重要」(エルコーリー氏)。

 そこで、SiCの研究開発に力を入れる。SiC結晶から同結晶を切り出して作る基板(ウエハー)、ウエハー上に作製するパワー素子、同素子を収めたパワーモジュールまで、パワーデバイス企業として「垂直統合」でSiC事業を展開する構え。オンセミは16年に米Fairchild Semiconductor(フェアチャイルドセミコンダクター)の買収を完了した。SiCパワー素子や同素子で構成したパワーモジュールの研究開発体制や製品ラインアップなどを拡充した。

車載充電器などに向けたオンセミのSiCパワーモジュール
車載充電器などに向けたオンセミのSiCパワーモジュール
(出所:オンセミ)
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 さらに21年8月にはSiC結晶技術を有する米GT Advanced Technologies(GT アドバンスト・テクノロジーズ)を買収すると発表した。SiCの結晶成長技術やウエハー技術の強化を図る。次の5~10年に向けて、SiCウエハーやパワー素子、モジュールの製造能力の拡大に引き続き投資していくという。

 Siパワー素子に関しては、同素子にとって大きい口径300mm(12インチ)のウエハーでの製造に今後2~3年かけて本格的に移行していく方針を示した。オンセミは19年に、米国ニューヨーク州にある米GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)の300mmウエハーの製造拠点を買収している。SiCのウエハーのサイズも今後、拡大させたいとしている。