ドイツInfineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)は、口径300mm(12インチ)のSi(シリコン)基板(ウエハー)に対応したパワー半導体の新工場をオーストリア・フィラッハに立ち上げた。総額16億ユーロ(1ユーロ=130円換算で2080億円)を投じ、予定より約3カ月早い21年8月初旬に稼働を開始した。折しも、半導体不足が問題となっている今、新工場の稼働開始はうってつけの時期だといえる。同社が2021年9月17日に開催したプレスカンファレンスにおいて、新工場の立ち上げは「完璧なタイミング」(同社Member of the Management Board and COOのJochen Hanebeck氏)と胸を張った。
300mmウエハー対応のパワー半導体工場は、ドイツ・ドレスデンに続き、インフィニオンとして2番目。フィラッハの新工場では、まず車載やデータセンター、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーといった分野に向けたパワー半導体製品を量産する。この新工場が稼働することで、年間で約20億ユーロの売り上げ増を見込めるという。
新工場の総床面積は約6万平方メートルである。今後、4~5年かけて生産能力を拡大していく。工場運営に必要な400人ほどの従業員のうち、現時点で約2/3以上を採用したとする。
新工場の稼働開始を記念し、21年9月17日に式典を開催。同社CEOのReinhard Ploss氏やCOOのJochen Hanebeck氏、Infineon Technologies Austria CEOのSabine Herlitschka氏といったインフィニオンの経営陣だけでなく、オーストリアの大臣やフィラッハ市長、欧州委員会の要人らが駆け付けた。
例えば欧州委員会のMartin Selmayr氏(Head of the European Commission Representation in Austria)は、「半導体のような基幹産業をアジアに依存しては取り残される」と危機感を示した。半導体市場における欧州のシェアは現在10%だという。これを30年までに20%に引き上げる計画だとした。インフィニオンは、この目標を達成するための「重要なパートナー」(同氏)と位置付けた。