住友ゴム工業は2021年9月22日、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)に向けた方針説明会をオンラインで開いた。主力のタイヤ事業では、製品に占めるバイオマス材料とリサイクル材料の合計比率を現状の25~30%程度から段階的に引き上げ、30年に40%、50年に100%とする目標を掲げる。
同社は「スマートタイヤコンセプト」と名付けた次世代のタイヤ構想を持ち、その中で環境配慮型「脱炭素タイヤ」の材料技術を磨いている。コネクテッドなど安全性や利便性の向上につながる技術と組み合わせて、29年には同構想の全技術を完成させたい考えだ。そして30年以降に発売する量産タイヤの新製品すべてに同構想の技術を盛り込む計画である。
材料技術については、生産から廃棄までのライフサイクルで二酸化炭素(CO2)排出量を評価する「LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)」を用いて有望な研究開発の対象を選定している。
同社が着目するバイオマス材料に、植物由来の微細繊維「セルロースナノファイバー(CNF)」がある。19年に発売した環境配慮タイヤの旗艦モデル「エナセーブ NEXTⅢ」でサイドウオール(側壁)に適用した。タイヤの質量比では数%未満にとどまるものの、当時「世界初」(同社)の試みとして注目を集めた。
CNFは植物の細胞壁内に存在し、直径が数~数十nm、長さが0.5~数μmの極めて細く短い繊維である。強度(引っ張り強さ)は3GPa(鉄の5倍)、密度は1.5g/cm3(鉄の5分の1)と強くて軽い。CNFの基となる植物は成長過程でCO2を吸収するため、材料自体で脱炭素に貢献できる。樹脂やゴムの補強材として使えば、完成品の強度を高めたり、軽くできたりする可能性を持つ。
今後はCNFのような持続可能材料の配合を増やし、50年のバイオマス材料とリサイクル材料の合計比率100%を達成したい考えだ。住友ゴムが乗り越えるべき課題として挙げるのは、[1]機能や品質のさらなる改良、[2]生産性の向上や低価格化、[3]原材料の安定的な確保、である。30年、50年に向けてこれら課題の解決策を模索していく。
「自動車業界は各社が電気自動車(EV)化にかじを切るなど急速な変化が起こっている」――。方針説明会に登壇した住友ゴム常務執行役員材料開発本部長の村岡清繁氏はこう語り、変革期を乗り切るための柔軟な対応力の必要性を強調した。既に環境配慮型の脱炭素タイヤでは、タイヤ世界シェア首位級のブリヂストンやフランスMichelin(ミシュラン)も研究開発を強化している。住友ゴムも技術を洗練して応戦していく構えだ。