電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するSkyDrive(東京・新宿)は2021年10月22日、大阪港の海上で大型ドローンの実証実験飛行を実施した。大型ドローンで海上での風の影響などを調べ、25年の大阪・関西万博に向けてサービス化を進める「空飛ぶクルマ」(eVTOL)の開発へ、分析結果を活用していくのが狙いだ。
実験飛行は、近くに大観覧車や行楽施設が位置する大阪港の埠頭で実施した。発着地点から高度約20mまで上昇し、海上へ奥行き約50mの四角形のエリアを飛行して発着地点に帰還する。緯度経度情報などを用いて複数のポイントを設定し、あらかじめ設定したルートを自動で飛行する。実験飛行ルートの総距離や飛行時の速度などは非公開だという。2日間で計12回の実験飛行を実施し、海風による飛行時の影響や機体の傷み具合、バッテリーの消耗度合いなどデータを収集して分析する。
今回の実験飛行では、大阪湾内を航行する船が頻繁に通るため、しばらく飛行開始を遅らせる場面も見られた。「今回は高度20mと低めを飛行するので、航行する船への影響を考える必要があり、飛行範囲を狭めて慎重に飛行をしている。航空機のように高度100m以上を飛行する場合は、もちろん船の上空も飛行できるようになる」(SkyDrive代表取締役CEOの福澤知浩氏)。
今回の実験飛行に用いたのは、既に同社が商用化済みの物流ドローン「SkyLift」の従来機種とほぼ同じ形状と性能を持つ、物流ドローンの開発機である。20年8月に有人飛行試験を実施したマルチコプターベースのeVTOL「SD-03」とは大きさなどが異なるものの、「見た目は違うが構造としては同じため、大型ドローンでも検証できる」(福澤氏)という。
関連記事 国産「空飛ぶクルマ」新型機が目の前で飛んだ、39億円追加調達も福澤氏は「有人での実験飛行には飛行許可の承認や制約などが多く、試験するのが難しい。機体への影響を確かめるには無人でも変わらないので、空飛ぶクルマと同じような構造を持つ物流ドローンで実験飛行を繰り返しながら分析していきたい」と話す。
加えて、実験飛行を約100名の地域住民に観覧してもらい、空飛ぶクルマへの関心度や、飛行時の騒音などに対する要望、実際に利用する際のサービス内容などについてのアンケート調査を実施する。例えば、無人の大型ドローンが飛行できても人を乗せて飛ぶイメージが湧かないという意見もあり、「空飛ぶクルマの知名度はまだまだ低いので、実験飛行を重ねながら社会受容度を確認し、高めていく必要がある」(福澤氏)。