米Apple(アップル)はノートパソコン(PC)「MacBook Pro」の新型を2021年10月26日に発売する。大別して14インチ(14型)と16インチ(16型)の2機種を用意。新しい独自プロセッサー(SoC)「M1 Pro」と「M1 Max」を搭載することで各種性能を高めた点が大きな特徴だ。アップルは20年6月にパソコン「Mac」シリーズなどに向けた独自プロセッサー「Apple Silicon」を開発中と明かし、同年11月には「M1」と発表。採用機の販売を始めた。M1 ProとM1 Maxはそれに続く独自SoCである。そこで、M1 Pro/Maxの特徴や、両SoCを採用した新型MacBook Proについて、10の項目でまとめた。
Q1:そもそもApple Siliconを採用しているのはどの製品?
Q2:M1搭載の13型MacBook Proと、M1 Pro/Maxを採用した14型/16型MacBook Proは大きく何が違う?
Q3:CPUや深層学習の推論処理などを高速に実行する「Neural Engine」に違いはある?
Q4:M1搭載の13型MacBook Proでは、プロ用として、外部機器と接続するインターフェースが少なかったけど今回は?
Q5:電源端子はType-C?
Q6:映像処理の性能はどれほど向上した?
Q7:音響性能も高めた?
Q8:高性能はいいけど、消費電力が増えて、発熱がすごいなんてことはない?
Q9:ディスプレーはどう変わった?
Q10:ストレージなど他に強化した点は?
Q1:そもそもApple Siliconを採用しているのはどの製品?
現在、5種類の製品で採用している。過去から順に振り返ってみよう。Apple Siliconの最初のプロセッサー「M1」を発表したのが20年11月で、3機種が採用した。ノートパソコンでは(1)「MacBook Air」と13型(2)「MacBook Pro」の2機種、デスクトップパソコンでは小型の(3)「Mac mini」だった。21年4月には、M1を搭載した(4)24型ディスプレーを備える「iMac」と(5)「iPad Pro」を発表し、パソコンだけでなく、タブレット端末にまで採用を広げた。これまで16型MacBook Proは米Intel(インテル)のプロセッサーだったが、今回M1 Pro/Maxに置き換えた。加えて、MacBook Proに14型モデルが加わり、M1 Pro/Maxを採用した。その結果、M1シリーズを採用するMacBook Proは13型と14型、16型の大きく3機種となった。
Q2:M1搭載の13型MacBook Proと、M1 Pro/Maxを採用した14型/16型MacBook Proは大きく何が違う?
GPUとメモリーの性能が大きく異なる。MacBook Proのユーザーは、映像制作や音楽制作の分野におけるプロやセミプロが多いとされる。特に映像制作の場合、GPUやメモリーへの性能要求は高い。だが、M1ではメモリー容量は最大16Gバイトにとどまり、8Kのような大容量の映像の編集や高品質なCG(コンピューターグラフィックス)の制作などでは不十分との声が挙がっていた。これに対してM1 Proでは最大32Gバイト、M1 Maxでは64Gバイトのメモリーを混載できる。メモリーの帯域幅も広げた。M1 Proで200Gバイト/秒、M1 Maxで400Gバイト/秒で、それぞれM1の約3倍、約6倍である。M1 Proに混載するメモリーのインターフェースでは、バス幅256ビットの「LPDDR5」を、M1 Maxでは同512ビットのLPDDR5を採用する。
GPUに関しては、M1 Proでは最大16コアのGPUを、M1 Maxでは最大32コアのGPUを搭載する。16コアの場合、演算処理性能は5.2T(テラ)FLOPS(フロップス)、32コアの場合は同10.4TFLOPSである。M1に比べてそれぞれ2倍、4倍の値だ。
M1では最大8コアだった。M1 ProとM1 MaxはそれぞれGPUコアの数が異なるいくつかのバージョンがある。例えばM1 Proであれば、GPUコアが14個と16個、M1 Maxであれば24個と32個のバージョンがある。
Q3:CPUや深層学習の推論処理などを高速に実行する「Neural Engine」に違いはある?
CPUでも差がある。M1 ProのCPUコア数は最大10個で、8コア品と10コア品がある。M1 Maxは10個である。M1 Proの10コア品とM1 Proの場合、10個のCPUコアのうち、8つが性能重視、2つが電力効率重視である。M1ではCPUコアの数は最大8個で、このうち性能重視と電力効率重視はそれぞれ4つだった。M1に比べてCPUコア数を増やしただけでなく、性能重視のコアの比率を高めている。こうした構成の結果、CPUの演算処理性能は、M1に比べて最大1.7倍だとする。
一方で、深層学習の推論処理などを高速に実行する「Neural Engine」に違いはない。M1 ProとMaxはM1と同じ16コアで、演算処理性能も毎秒11兆回(11TOPS)と同じだ。2020年発売の「iPhone 12」シリーズに搭載した「A14」プロセッサーも16コアのNeural Engineを搭載し、11TOPSだった。なお、21年発売の「iPhone 13」シリーズに搭載の「A15」では、Neural Engineのコア数は16と同じながら、毎秒15兆8000億回(15.8TOPS)で演算できる。
なお、M1 ProとMaxはM1に比べてNeural Engineの数を据え置いたとはいえ、M1に比べて機械学習のモデルのトレーニング(学習)や推論の処理性能は向上しているもよう。GPU性能が向上している上、CPUが内蔵している機械学習用のアクセラレーターの性能も向上したからである。