デンソーは2021年10月29日、21年度上期(21年4~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比24.5%増の約2兆5829億円、営業利益は同2289億円増の約1593億円と、増収増益を達成した。車両減産の影響を強く受けたものの、電動車向けのインバーター製品などが業績を支えた。
「第2四半期(21年7~9月)単体では車両減産の影響により、エアコンやメーターの売上高が前期比約15%減となったが、電動化やパワートレーン関連は同約5%減にとどまった」(同社取締役経営役員の松井靖氏)という。インバーターを中心とする電動化部品を「トヨタ自動車に加え、北米の大手自動車メーカーなど、トヨタ以外にも拡販できた」(同氏)とする。
また、第2四半期の車両減産は「過去の減産と違って、予告された減産だった」(同氏)とも述べた。「特にトヨタは早め早めに減産を教えてくれたため、備えることができた」(同氏)という。
21年度通期(21年4月~22年3月)の業績予想は、売上高が前年比12.2%増の5兆5400億円、営業利益が同183.7%増の4400億円と、前回予想を据え置いた。「営業利益の4400億円は、もともと900億円の下振れリスクを織り込んだ数字だった。現時点では車両減産の影響はその範囲内にとどまっている」(同氏)。
下期(21年10月~22年3月)は車両の挽回生産も期待する。加えて、「AI(人工知能)による車載ソフトの自動生成や、出荷検査の自動化など、業務のデジタル化を進めた効果が下期に出てくる」(同氏)。このため、通期の営業利益4400億円は確実に達成できると強調した。
半導体起因の供給ショートない
半導体不足については、「現状では不透明感が拭えず、22年1~3月まで枯渇感が続く」(同氏)と述べた。ただ、足元の第2四半期に車両の減産が生じているため「半導体在庫の適正化が進む」(同氏)とみる。現状では緊急措置的に半導体を航空機で輸送する場合もあるが、船での輸送に戻すなど、適正化が進みそうだという。
ドイツInfineon Technologies(インフィニオンテクノロジーズ)が300mm工場を稼働させたことや、工場火災を起こしたルネサスエレクトロニクスが復旧したこと、台湾の大手Siファウンドリーが生産能力の増強を進めていること、などもプラスに働く。「需給は必ずバランスする」(同氏)。
なお、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の日本工場に、デンソーが協力するとの一部報道については、回答を控えた。