キヤノンは2021年12月15日、「業界最多」(同社)とする画素数が320万画素の新しい裏面照射型のSPAD(Single Photon Avalanche Diode:単一光子アバランシェダイオード)センサーを開発したと発表した。SPADセンサーは感度が高く暗所での撮影性能に優れるため、監視カメラなどに向く。同社は22年後半にSPADセンサーの量産を開始し、同社の監視カメラに載せる計画だ。車載や産業、医療といった幅広い用途も想定しており、外販も行う予定である。今回、画素数がフルHD(1920×1080画素)を超えたことで、監視カメラ用途への採用に弾みがつきそうだ。
米サンフランシスコで開催した半導体分野の国際会議「67th International Electron Devices Meeting(IEDM 2021)」で発表した。SPADは、受光感度を上げたフォトダイオードである「APD(Avalanche Photodiode)」を、入射してきたフォトン(光子)数を数えられる「ガイガーモード」で動作させ、いわゆるフォトンカウンターとして使う。入射した1つの光子から大量の電子と正孔のペアを雪崩のように大量に生じさせる「アバランシェ(雪崩)現象」を利用して受光感度を高めている。これにより、例えば監視カメラに応用した場合、暗所での撮影性能を高められる。
キヤノンが今回開発したSPADセンサーは、星が出ていない闇夜よりも暗い、0.002lux(ルクス)の明るさでも鮮明な画像を獲得できるという。肉眼で周囲を認識できないほど暗い0.0003luxという環境下でも、被写体を識別できる水準の画像を得られたとする。