東芝は2022年2月8日、会社2分割によって設立する1社である「インフラサービス会社」の事業戦略を発表した。東芝の再生エネルギーやインフラなどの事業を担い、30年度に21年度から1兆円増となる売上高2.5兆円を目指すとした。成長の鍵とするのは、「今後市場が急拡大する」(同社)と見込む、「二酸化炭素分離回収・利用・貯留(CCU/S)」や「再生可能エネルギー」、「量子暗号通信」といった新たな事業領域だ。こうした分野に経営資源を集中投資し、新たな成長を目指す。物言う株主との対立で迷走してきた東芝は、新たな体制で企業価値を向上できるか(図1)。
東芝は23年度下期を目標に、同社の事業を「インフラサービス会社」と「デバイス会社」という2つの独立会社* に分割する。インフラサービス会社は、再生可能エネルギーやインフラ事業を中心に手がける。デバイス会社は半導体事業が中心だ。21年11月時点では3分割としていたが、2分割に変更した。
*いずれも仮称。
「成長領域」への資源集中で売上高1兆円増の2.5兆円へ
インフラサービス会社の主な事業は、(1)再生可能エネルギーなどの「エネルギーシステムソリューション」(以下、エネルギー事業)、(2)鉄道システムなどの「インフラシステムソリューション」(以下、インフラ事業)、(3)システムインテグレーション(SI)などの「デジタルソリューション」(以下、デジタル事業)――の3本柱だ。
これらの事業を合わせたインフラサービス会社の21年度売上高規模(見込み)は1兆5200億円となる。内訳は、エネルギー事業が5700億円、インフラ事業が6500億円、デジタル事業が2300億円となる。インフラ事業が売上高構成比で最も高く、上下水道ソリューションなどの公共インフラ事業が売り上げを牽引する。
同社は30年度に向けて、21年度から約1兆円増となる売上高2兆5000億円の達成を目指す。売上高を1兆円積み上げるために、「成長領域」(同社)と呼ぶ新たな事業に積極投資する。具体的には[1]CCU/S(二酸化炭素分離回収・利用・貯留)[2]再生可能エネルギー[3]物流ソリューション[4]量子暗号通信、などである。各事業分野においてこうした成長領域に設備投資したり、研究開発費を積極投入したりする。まんべんなく売上高を向上させる戦略である(図2)。
インフラサービス会社は21年度~25年度の設備投資を4000億円、研究開発費を3900億円と見積もる。投融資を加えた合計額は、16年度~20年度の約1.4倍に当たる9140億円とした。新設する同社の研究開発センター「インフラサービス共創センター(仮称)」を中心に資源投入する考えだ。