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 CES 2022の開催期間中に、パナソニックのVRグラス「MeganeX」(読みは「メガーヌエックス」であり「メガネエックス」ではない)を体験したので、その画質に関するインプレッションと、この2年の技術的進歩を取材した結果を報告する。筆者はリアル開催だった2020年のCES 2020で第1弾となる試作品を見ており、2021年のリモート開催だったCES 2021でも取材し、さらに今回の取材では実際に耳に掛けてのぞけたことで、画質を体験できた。

2022年中にパナソニック子会社Shiftallから発売予定のVRグラス「MeganeX」
2022年中にパナソニック子会社Shiftallから発売予定のVRグラス「MeganeX」
(出所:パナソニック/Shiftall)
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 パナソニックのVRグラスのコンセプトは単純明快だ。同社の事業開発センターXR総括の小塚雅之氏は、前回のCES 2021でのインタビューでこのように話していた。「今回のVRグラスでは2つの課題を解決したいと考えました。1つは、オーディオビジュアルの会社として画質・音質を良くしたいということ。もう1つは装着性の改善です。画質では、表示デバイスの画素構造を見えないようにして、さらにHDR再生も進化させたいと考えました」(小塚氏)。この思いに沿ってMeganeXは開発されたのである。

 開発スケジュールは大幅に遅れたという。当初は2020年のお披露目から1年以内に発売する予定だったが、その後に追加機能が多く発生したため、実装に時間を要した。パネルは2020年の時点で右目用、左目用それぞれが水平2048×垂直2048画素だったが、2021年はいずれも水平2560×垂直2560画素に進化。2022年モデルも同じ米Kopin製のマイクロ有機ELを採用している。2Kの時は1インチパネルだったが、2.6Kでは1.3インチと大きくなったので、本体は若干サイズアップとなった。

 パナソニックのデジタルプロセス開発センターXR開発部部長の柏木吉一郎氏は開発の背景を次のように説明する。「VRでの解像感、再現性を上げようという狙いもありますが、実は当初から水平2560×垂直2560画素でやりたいと考えていました。2020年に展示したモデルのときから約100度の視野で設計していました。ただ、そこに水平2048×垂直2048画素のOLEDパネルを入れると四隅に黒みが残ってしまい、有効画素分の視野としては77度くらいに制限されていました。それに対して水平2560×垂直2560画素のパネルなら、目いっぱいに画素が入るので、約100度の視野が確保できました。画素のピッチは変わらずに有効画素が1.3倍に増えています」(柏木氏)。

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MeganeXのスペックと技術内容
MeganeXのスペックと技術内容
(出所:パナソニック)
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 大きな違いはセンサー。2020年は3軸センサーだったが、2021年に6軸に増やした。ユーザーの頭の動きを3方向しか検出できなかったのが、6軸になったことで、頭の3方向の動き(前後、左右、上下の動き)に加え、体の3方向の動きにも対応できるようになった。操作性も向上した。鏡筒の両脇にヘッドトラッキングカメラを装着することにより、外部マーカーを必要としない光学式のインサイド・アウトヘッドトラッキング検出方式に変え、さらにエコー/ノイズキャンセリング用のマイクをレンズ下部に入れる必要があり、それらがサイズアップに影響した。

 IPD(瞳孔間距離)・視度調整機能も搭載した。2020年モデルではメガネをかけている人には使えないという指摘があった。それには視度調整用アダプターレンズの交換で対応していたが、さすがにそれでは使いづらい。そこで、無段階のメカニカル調整機能を搭載したのである。

 スピーカーも内蔵した。2020年モデルではイヤホンをメインにして、スピーカーは後付けとしていた。用途によってイヤホンとスピーカーの必要度が違うという理由からだ。展示会のデモやシミュレーション、プレゼンテーションなどでは、周囲の人と会話できなくては困る。となるとイヤホンよりスピーカーがいい。一方でゲームやVRコンテンツ、映画などの没入体験、もしくはリモート会議といった用途ではイヤホンの方が向く。2020年に関係者へ披露した後、両方にきちんと対応できなければ駄目だと判断し、スピーカーは本体に搭載し、イヤホンは本体に付属したリモコンボックスにつなぐように変更した。

 では2022年モデルのMeganeXのスペックが分かったところで、実際にVRコンテンツを見よう。筆者の視力は裸眼で0.8くらいなので、そのままで大丈夫だ。本体上側のつまみで両目の間隔を合わせ、下側のスライダーで視度を調整する。最初のコンテンツは8Kの『Joy lives in New Orleans Jazz』。ジャズ発祥の地、米ニューオーリンズを舞台にした映像だ。映像制作会社であるパナソニック映像が制作した。