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 パナソニックが、希少金属(レアメタル)のコバルト(Co)を使わない「Coフリー」のリチウムイオン電池を2025年までに実用化する意向を明かした。ロシアの供給不安で価格が高騰したニッケル(Ni)の使用量も減らしていく計画。電池開発において、資源の調達リスクの抑制が重要なテーマになってきた。

 「2~3年以内にCoフリーを実現する」。こう宣言したのは、パナソニック エナジー社副社長でCTO(最高技術責任者)を務める渡辺庄一郎氏である(図1)。

図1 パナソニック エナジー社副社長の渡辺庄一郎氏
図1 パナソニック エナジー社副社長の渡辺庄一郎氏
「第13回国際二次電池展」で講演し、電池開発の方向性を語った。(撮影:日経Automotive)
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 パナソニックが1994年に量産を開始した同社初のリチウムイオン電池の正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO2)だった。正極材料にNiとマンガン(Mn)を加えたNMC系の電池を2003年に実用化し、Coの含有率を94年の電池と比べて33%まで低減した。06年には、Mnの代わりにアルミニウム(Al)を使うNCA系の電池の量産を開始し、Co含有率を15%まで減らした(図2)。

図2 パナソニックの円筒形リチウムイオン電池
図2 パナソニックの円筒形リチウムイオン電池
(撮影:日経クロステック)
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 Coは電池を構成する材料の中で最も高価なものの1つとされる。しかも、紛争が続くコンゴ民主共和国が主要な産出国で、供給が安定せず価格上昇が続いている。コスト低減と資源調達リスクを考えて、電池メーカー各社はCo使用量の削減を進めてきた。

 パナソニックはCoの代わりにNiの比率を高めた「ハイNi」正極の開発を進め、現在量産中の電池のCo含有率を「5%以下」(渡辺氏)まで減らした。今後さらに減らして「Coフリー」にする。Coの比率を小さくすると安定性や信頼性が低下するが、その低下を抑える技術開発のめどが立ったようだ。

 Coを減らすのにつれて、使用量が増加していったのがNiである。一般にNiの比率が高いほど容量密度は高い。日経BPの分析では、米Tesla(テスラ)電気自動車(EV)「モデル3」に搭載する「2170」電池セルのNi比率は9割以上と高い。