現実の世界の物事を仮想空間で忠実に再現するデジタルツインに向けた米NVIDIA(エヌビディア)のツール基盤(プラットフォーム)「Omniverse(オムニバース)」のエコシステムが急拡大している。2021年夏時点で5万人以上だったユーザー数は、22年3月時点で15万人を突破。新たに米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が利用を始めるなど、大手企業のユーザーも増えつつある。22年3月にオンライン開催した自社イベント「GTC」では、オムニバースのヘビーユーザーなどに対して新たな専用コンピューターを発表した。ライトユーザーに対しては一部の機能をクラウド対応にして、エヌビディアのGPUを搭載していないパソコンやタブレット端末でも利用可能にするなど、エコシステム拡大に向けた施策を次々と打ち出している。
オムニバースは大別して「クリエーションとオペレーションの2つの側面を持つ」(エヌビディア)。クリエーションとは、建築やゲームなどにおける3D CG(3次元コンピューターグラフィックス)の制作を主に指す。異なる種類の制作ツールを使っているユーザーでも、同一の仮想空間内で3D CGの制作に共同、かつ同時に取り組むことができる。オペレーションとは、ロボットや自動車、エレクトロニクス、通信といった製造業分野における各種シミュレーションのことである。今回のGTCでは、特にオペレーションの側面を強調していた。
エヌビディアは、20年12月にオムニバースのオープンベータ版の提供を開始し、有料のエンタープライズ版を21年11月から一般提供を始めた。今回のGTCでは、エンタープライズ版のユーザーとして、複数の大手企業を紹介した。例えばアマゾン・ドット・コムは、オムニバース上でエヌビディアのロボット向けシミュレーションツール「NVIDIA Isaac Sim」を利用し、物流施設内のレイアウトや施設内のロボットの挙動を検証する用途などに用いているという。米小売り大手Kroger(クローガー)や米ホームセンター大手のLowe’s(ロウズ)も、オムニバースのユーザーだと明かした。米清涼飲料水大手のPepsiCo(ペプシコ)もユーザーで、同社の600以上の配送センターの効率化に向けて利用中だとした。重電分野では、スペインSiemens Gamesa Renewable Energyが洋上風力発電施設のレイアウトの最適化などに向けて、オムニバースを利用している。