ソニーグループ(ソニーG)は2022年5月18日、経営方針説明会を開催した。大きな可能性を感じる成長領域として、同社がモビリティー分野とともに位置づけたのが、メタバース分野だ。エンターテインメント技術を中心に、プラットフォームサービスを提供していく考えを示した(図1)。
「メタバース空間は単一のメタバースに統合されるのではなく、いろいろな空間が提供されていくことになるだろう」
ソニーG 専務兼CTO(最高技術責任者)の北野宏明氏はメタバースの将来像をこう示した。ソニーGは、こうした将来像を踏まえて今後、目的に応じたメタバースの技術や空間をプラットフォーマーとして提供していく考えだ。同社が持つ映像や音響、物理的シミュレーション技術などを統合することで、「きわめてリアルなメタバース」(同氏)の実現を目指す。
サッカー選手の動きをリアルタイム再現
ソニーGがメタバース領域でまず取り組むのが、仮想空間上でのスポーツ観戦やライブパフォーマンスといったサービスだ。同社は21年11月、英マンチェスター・シティ・フットボール・クラブとの協業を発表した。同クラブとの協業によって、スタジアムにおける実際の選手の動きをAI(人工知能)技術でデータに変換し、仮想空間上にリアルタイム再現する技術の開発を進めているという注1)。「場所の制約なく選手のプレイを楽しめるようになる」と代表執行役 会長兼社長 CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏は説明した(図2)。
注1)同説明会では観戦に使うデバイスについては言及がなかったものの、同日配信された動画ではスマートフォンで視聴・体験する姿が見られた。さらに、ソニーGのヘッドマウントディスプレー(HMD)「PlayStation VR2」などを活用するものと思われる。
著名アーティストなどのライブパフォーマンスは、オンラインゲーム空間を主な舞台にしていく考えだ。例えば、ソニーGが出資する米Epic Games(エピックゲームズ)は、人気オンラインゲーム「フォートナイト」上でライブイベントを実施している。「ゲームではこのようなビジネスモデルができつつある。ライブサービスはそのひとつだ」と吉田氏は語った。