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 半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)は2022年6月24日、「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」(茨城県つくば市)を開設した(図1)。複数の半導体チップを積み重ねて性能や機能を高める「3次元実装技術」に必要な材料や装置の開発・評価を、日本のサプライヤーと共同で進めていく。開所式にはTSMCのCEO(最高経営責任者)である魏哲家(C.C.Wei)氏のほか、研究開発センターのバイス・プレジデントである江本裕センター長や、萩生田光一経済産業大臣らが出席した。

図1 TSMCジャパン3DIC研究開発センターの開所式の様子
図1 TSMCジャパン3DIC研究開発センターの開所式の様子
開所式にはTSMCのCEO、魏哲家(C.C.Wei)氏らが出席した(写真:日経クロステック)
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 魏氏は「これまでTSMCは日本の産業界と緊密な協力関係を築いてきた」と話し、研究開発センターを活用して、今後数年をかけて次世代半導体パッケージに必要な半導体材料を開発することを期待していると述べた(図2)。TSMCが台湾以外に研究開発(R&D)拠点をつくるのは、今回が初めてである。2022年内に製造装置などの搬入を完了させて本格稼働を始める予定だ。

図2 TSMCのCEO、魏哲家(C.C.Wei)氏
図2 TSMCのCEO、魏哲家(C.C.Wei)氏
(写真:TSMC)
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 萩生田大臣は、TSMCと日本の製造装置・材料メーカーが3次元実装技術を共同開発することで「グローバルなオープンイノベーションを創出する中心地のつくばが、さらに日本の半導体産業に貢献する」と期待を述べた(図3)。先端半導体では回路の集積度を高める「微細化」技術の難度が高まる一方で、チップ同士を3次元に実装することで性能や機能を高める技術が注目を集めている。江本センター長は「微細化だけに頼らない全く新しい半導体をつくるのが目標だ。日本のサプライヤーと直接話し合うことで、R&Dのスピードを圧倒的に高められる」と説明した。

図3 萩生田光一経済産業大臣
図3 萩生田光一経済産業大臣
(写真:日経クロステック)
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研究開発センターでは量産を想定したプロセスを構築

 TSMCの研究開発センターは、産業技術総合研究所(産総研)つくばセンター内のクリーンルームに拠点を構える(図4)。材料メーカーが提供した新材料の評価や検証を進めて3次元ICの実装(パッケージング)技術を確立していく。開発した3次元IC実装技術は、台湾などの半導体後工程工場に応用して自動化や量産化につなげる計画だ。この研究開発センターでは、TSMCの台湾や日本の社員がR&Dに取り組む計画である。産総研の人員がこのR&Dに直接関わることはないという。

図4 TSMCジャパン3DIC研究開発センターの外観
図4 TSMCジャパン3DIC研究開発センターの外観
(写真:日経クロステック)
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 江本氏は「ここでのR&Dは量産に向けてのものであり、学会や論文発表は狙っていない」と述べた。新材料がターゲットで、それを使った場合の放熱やクラック(ひび割れ)、静電容量や消費電力、処理速度など、さまざまな特性を評価していくとした(図5)。R&Dでは「トライ・アンド・エラーを数十回も繰り返すことになる」とし、「早いことに越したことはないが、1~2年で成果がでるものではない」(江本氏)と長期的な取り組みを視野に入れる。

図5 TSMCジャパン3DIC研究開発センターのバイス・プレジデントである江本裕センター長
図5 TSMCジャパン3DIC研究開発センターのバイス・プレジデントである江本裕センター長
(写真:日経クロステック)
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 同日公開した同センターのクリーンルームでは、ウエハーをチップに切り分ける作業を想定したデモを披露した(図6)。作業の様子は、エンジニアが装着した米Microsoft(マイクロソフト)製のホロレンズから外部に送信でき、遠隔からモニタリングできるという。今後、装置の搬入を進めて、量産を想定した実証ラインを構築していく。センター内には日本のサプライヤーである装置・材料メーカーなど24社を紹介していたが、今後も必要に応じてサプライヤーを広げていく見通しという。

図6 クリーンルームの様子
図6 クリーンルームの様子
(写真:TSMC)
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