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画像分析機能を持つイメージセンサー「IMX500」(写真:ソニーG)
画像分析機能を持つイメージセンサー「IMX500」(写真:ソニーG)
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 ソニーグループ(ソニーG)がイメージセンサー事業で新たな戦略を打ち出した。画像データではなく目的に合わせた分析データを出力し、市場を社会インフラ全般に拡大する。分析アルゴリズムを継続的に進化させることで、リカーリング(継続課金)型モデルを確立する。

 新戦略を担うのは、画像を取得するイメージセンサーと、データを処理するロジックチップを組み合わせた「IMX500」だ。画像データを得るだけの従来のイメージセンサーとは異なり、その場でデータを分析して対象物の有無や分類といった結果だけを出力する。いわゆる「AI(人工知能)カメラ」を実現できる。

ソニーGが新たに打ち出したイメージセンサー事業の戦略(出所:日経クロステック)
ソニーGが新たに打ち出したイメージセンサー事業の戦略(出所:日経クロステック)
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 アプリやサービスの開発環境「AITRIOS(アイトリオス)」をクラウド上に構築し、IMX500から収集したデータをサービスに応用することで、継続的に課金してもらうリカーリングビジネスを構築できる。この仕組みは、これまで売り切り型のビジネスモデルが中心だったイメージセンサー事業を大転換させる可能性を秘めている。大手メーカーのスマートフォンの売れ行き次第でジェットコースターのように乱高下していたイメージセンサー事業の売上高が安定するなど、利点が見込めるからだ。

 ソニーGにおけるイメージセンサー事業の2023年3月期の売上高は1兆4400億円と、全社売上高の約13%になる見通しだ。同事業のビジネスモデルの転換とグローバルでの開発体制は、1事業のみならずソニーG全体の変革につながる可能性を秘めている。

「画像出さず」でプライバシー問題を解決

 現在、IMX500とAITRIOSを使った20以上の実証が世界で進んでいる。その代表例がイタリア・ローマ市のスマートシティー活用だ。ソニーGは2021年6月からローマ市内の街灯にIMX500を設置し、取得した画像から駐車スペースの有無を検知したり、バス停の混雑状況からバスの便数を調整したりといった用途に利用している。

ローマ市の街灯に設置したIMX500で駐車スペースを検知している様子(出所:ソニーG)
ローマ市の街灯に設置したIMX500で駐車スペースを検知している様子(出所:ソニーG)
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 ローマ市での実証の特徴は、画像を送信しないことによる通信量の削減だけでなく、市民のプライバシーにも配慮している点だ。ローマ市は以前から駐車スペースの不足や交通渋滞、バスの過剰乗車が問題になっていた。通常のカメラを使えば交通インフラを改善できるものの、個人情報保護の規制が厳しい欧州では市民のプライバシーを侵害する恐れがある手法は採用できない課題があった。IMX500を使うことで、車や人の有無や数といった必要な情報だけを出力でき、プライバシーの問題を解決した。

 小売業の効率化も期待されている。飲食店向けクラウドサービスを開発するEBILAB(エビラボ、三重県伊勢市)は、IMX500を使って商品の欠品確認や在庫管理を自動化するシステムを構築した。棚の商品が欠品するとスタッフのウエアラブル端末に自動で通知が届く仕組みで、スタッフは接客などの業務に集中できるようになる。来店客の年代や性別、天候情報を利用すれば、店舗の販売拡大や顧客満足度の向上に役立てられる。

棚に並んだ商品の在庫を管理する様子(出所:ソニーG)
棚に並んだ商品の在庫を管理する様子(出所:ソニーG)
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 そのほか、米国では人数を数える機能を使ってオフィスビルの空調管理に活用している。画像からは多くの情報を得られるため、複数のセンサーの代わりにIMX500をIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器としてさまざまな用途に活用できる。サービスの種類を増やしていけば、「あらゆる社会インフラに導入できる」(ソニーG)と期待を込める。