青色レーザー溶接は、青色波長領域である400~465nm(ナノメートル)付近の光を発振する半導体レーザーを使った溶接のこと。光源には、青色レーザーダイオードを使用する。最大の特徴は、非鉄金属である銅の溶接や加工に強いことだ。今後、ハイブリッド車(HEV)やプラグインHEV、電気自動車(EV)といった電動車両(xEV)の世界的な生産台数の増加に伴い、銅製部品の接合や微細加工の需要が2~4倍に増えると予想されていることから、製造業の設計部門や生産技術部門を中心に青色レーザー溶接は注目を集めている。
銅の溶接や加工に強いのは、青色レーザーが銅によく吸収されるからだ。青色レーザーの銅への吸収率は約60%と高い。より多くの熱エネルギーが銅に入って容易に溶けるため、消費エネルギーを削減しながら、高い溶接品質を得られるという利点が青色レーザーにはある。
これに対し、現在、溶接で主流である赤外線レーザー(990~1070nm付近)の銅への吸収率はわずかに5%程度。約95%は銅の表面で反射されてしまう。そのため、赤外線レーザーは出力を大きくする必要があるが、無理やり熱エネルギーを銅に入れると、溶融金属の突沸による飛沫(スパッタ)や急冷による空隙(ブローホール)といった溶接欠陥が生じる恐れがある。
xEVのコア部品はモーターや2次電池、インバーターだ。それらに多用される巻き線や電極などの銅製部品を高品質で接合したり加工したりする上で、スパッタやブローホールは大敵だ。例えば、リチウムイオン2次電池の生産工程でスパッタが発生し、それが異物としてセル内部に取り込まれると、使用中に発煙や発火トラブルを起こしかねない。それを防ぐために、現在では最終的に目視による全数検査で異物の混入の有無を確認しているほどだ。青色レーザー溶接であれば、欠陥となるこうしたスパッタやブローホールの発生をかなり減らせる。
実用化は欧州と中国が先行している。けん引するのは、ドイツLaserline(レーザーライン)と中国United Winners Laser(UWレーザー)である。Laserlineの特徴は、高出力化だ。青色レーザー溶接は赤外線レーザーと比べて出力が小さいという課題がある。例えば、数百W程度では厚さが0.数mm程度の銅の薄膜の溶接には使えるが、数mm以上になると歯が立たない。そこで高出力化に向けた開発が進んでおり、Laserlineは出力が3kWの溶接機を開発している。