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 東レは2022年8月29日、耐酸性とろ過効率をともに大きく向上させたナノろ過(NF)膜を開発したと発表した。リチウムイオン2次電池からのリチウム回収への利用を想定している。

 開発したNF膜は架橋構造を持つポリアミド(PA)製で、膜に存在する微細な孔の大きさが1価イオンは通すが、2価イオンを通さない。同様のNF膜はこれまでもあったが、従来品は強酸と反応して劣化するため使用対象が中性領域の溶液に限られ、リチウムイオン2次電池から強酸でリチウムを溶かし出して回収するのには使えなかった。さらに孔の大きさにバラツキがあって分離効率に改良の余地があった。

 東レは、酸によって膜が劣化するメカニズムの知見を基に、「分子の弱い部位に酸が近づきにくくするアプローチ」(同社)によって耐酸性を強化。さらに「材料(架橋構造を持つPA)を造る際の反応条件を制御して」(同)微細な孔の大きさをそろえ、分離効率を向上させた。耐酸性は従来品比で約5倍、イオン選択分離性は約1.5倍になったという(図1)。

図1 新開発のナノろ過(NF)膜
図1 新開発のナノろ過(NF)膜
従来の耐酸性NF膜はイオン選択分離性とトレードオフの関係があったが、開発品は両立させた。(出所:東レ)
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