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 2022年10月1日から予定されていた「白ナンバー」車注1)の運転者に対するアルコール検知器を使った飲酒検査の義務化が、当面延期される見込みとなっている。急増する検知器の需要に対し、半導体不足の影響などで供給が追いつかないためだ(図1)。

注1)自社の従業員の移動や自社の荷物の運搬に使う社用車のこと。

図1 携帯型のアルコール検知器
図1 携帯型のアルコール検知器
写真は中央自動車工業の製品(写真:日経クロステック)
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 パイオニアとアルコール検知器メーカーの中央自動車工業が2022年9月5日、同義務化の動向を説明した(図2)。道路交通法施行規則の改正に伴い2022年4月に、企業が事業所ごとに選任し社用車の管理などを担当する「安全運転管理者」注2)の業務に飲酒検査が追加された。同年10月1日からは、アルコール検知器を使ってこの検査を実施することが義務付けられる予定だった。

注2)乗用車を5台以上、または乗車定員が11人以上の車両を1台使う事業所ごとに選任する必要がある。

図2 パイオニアモビリティサービスカンパニーマーケティング課課長の大野耕平氏
図2 パイオニアモビリティサービスカンパニーマーケティング課課長の大野耕平氏
事業者に対するアルコール検知器を使った飲酒検査の義務化について、動向を説明した(写真:日経クロステック)
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 ただ、足元の検知器の供給状況などを踏まえ、警察庁が2022年7月15日~同年8月13日まで意見公募(パブリックコメント)を受け付けた。内容には「当分の間、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化に係る規定を適用しないこと」が含まれる。現在は結果の公示が待たれる状況という注3)。警察庁が同年5~6月に実施した聞き取り調査では、検知器を入手済みの安全運転管理者は4割弱にとどまっていた。

注3)パブリックコメントの結果を公示した後、道路交通法施行規則が再改正され、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化が2022年10月1日から延期になる見通しである。

 アルコール検知器には、事業所ごとに設置する「据え置き型」と、場所を選ばず飲酒検査ができる「携帯型」の製品がある。白ナンバー車のユーザーは直行直帰する場合が多いため、検査の義務化に備えて、携帯型の需要が高まっている。ただ、検知器メーカーが半導体の調達に苦労し、携帯型は品薄の状態が続いているのが現状だ。

 携帯型の検知器を製造する中央自動車工業によると、検知器の納期は機種によって異なるが、同社の場合「早いもので2022年10~11月が目安。遅いものは1年程度待ってもらう必要がある」(同社営業開発部営業推進グループの三井剛正氏)。検知器を製造するうえで不足している半導体は「マイコンやBluetoothに対応するためのもの」(同氏)という。