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 これまで人間が乗って操作していたフォークリフト作業を無人化できる自動運転フォークリフト(AGF)の開発が進んでいる。従来のAGFは棚など位置の定まった場所間の運搬のみに対応していたが、トラックからの荷降ろしなど位置が定まりにくい場所への荷役にも適用できる新型機が登場した。

トラック上の荷物の積み下ろしを実演する豊田自動織機の新型自動運転フォークリフト(AGF)
トラック上の荷物の積み下ろしを実演する豊田自動織機の新型自動運転フォークリフト(AGF)
フォークリフト上部のLiDARで自車とトラックの位置を把握し、側面のLiDARとカメラでパレットの位置を把握する。(写真:日経クロステック)
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 「建物内の自動化は進んだが、これからは建物と建物の‟結節点”への対応が競争軸になる」。こう語るのはフォークリフト大手の豊田自動織機トヨタL&FカンパニーR&DセンターAR開発部LX室室長の鈴木宏紀氏だ。ここでの結節点とは、工場や倉庫の間をつなぐトラックやフォークリフトを使った積み下ろしを指す。

 自動化が急がれる背景には、物流業界が抱える労働力不足がある。特に、免許が必要なフォークリフト運転者は人手不足が顕著になっている。さらに追い打ちを掛けるのが「2024年問題」だ。労働基準法の改正によって、2024年4月からトラックドライバーなど自動車運転の業務に対する時間外労働の規制が強化される。労働力不足が深刻化する中で、できるだけ早く対策を打ちたいという物流業界関係者の声が大きくなってきた。

 豊田自動織機は、以前から導入してきた「Rinova AGF」をベースに、トラックからの荷降ろしに対応した機能を搭載した新型機を開発した。トラックからの荷降ろしはこれまで、有人のフォークリフトでないと難しいとされてきた領域だ。その理由は「ズレ」の問題である。倉庫内の固定棚上の荷物と異なり、トラック上の荷物の位置は駐車位置によって毎回場所が変化し柔軟な対応が求められる。同社はこの問題をLiDAR(レーザーレーダー)とカメラによる認識を組み合わせて解決を狙う。

 フォークリフトの上部に設置したLiDARで自車の位置とトラックの位置を把握し、側面のLiDARとカメラによって荷台の上のパレット(荷物を載せる台)を検知する。側面でパレットを検知してから旋回することで、狭小地でのスムーズな荷役を可能とした。鈴木氏によれば「有人の2倍程度の時間で積み下ろしができる」とのことだ。

 「世界初」の技術として同社がアピールするのが、走行ルートの自動生成機能だ。従来機では利用者があらかじめルートを設定する必要があったが、新型機では豊田中央研究所と共同開発したアルゴリズムを用いて最適なルートを自動で生成して走行する。LiDARによる自車位置把握によって、従来必要だった磁気マーカーやレーザー誘導反射板の設置が必要なくなることも併せて、負担軽減の効果は大きい。

 今後の課題は、導入にかかるコストだ。鈴木氏が「センサーを増やせば作業を速くすることは可能だが、コストもその分増加する」と語るように、普及には機能とコストのバランス感覚が求められる。

 そのコスト面を強みに打ち出すのが中国VisionNav Robotics(ビジョンナビロボティクス)だ。