ソニーは2022年10月5日、においのもと(嗅素)を制御して提示する「におい提示装置」を発売すると発表した(図1)。嗅覚測定や、嗅覚トレーニングなどにおいに関する研究測定用途に展開する。
昨今、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患の発症前に嗅覚が低下することが報告されており、嗅覚測定の有用性の検証が期待されている。ソニーは今回、「嗅覚測定をDX(デジタルトランスメーション)する」ことを目標に掲げて同装置を開発した。

国内で50年以上も使われている標準的な嗅覚測定は、嗅素を浸した紙に鼻先を近づけ、被験者が何のにおいか特定できるかを測定する。5種類のにおいと8段階の濃度で測定するが、測定ごとに嗅素をつけた紙を用意する必要があるため、測定時間が30分以上かかる。また、においの換気や脱臭が必要なため専用の空調設備を備えた実験室が必要である。
一方、ソニーはにおいの提示を機械化して多数の嗅素を制御し、それらを混在させず均一に提示する技術の開発によって嗅覚測定のDX化を実現した(図2)。同社はそのにおい制御技術を「Tensor Valve(テンソルバルブ)テクノロジー」と呼ぶ。測定は10分程度で完了する。
