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 米Connectivity Standards Alliance(CSA)は、スマートホーム通信統一規格「Matter」*1の1.0版の公開およびその認証プログラムを始めたと、2022年10月4日(現地時間)に発表した ニュースリリース 。これを受けて、Matter 1.0に準拠の半導体製品が続々登場する。

図 図の右側がMatterのロゴ
図 図の右側がMatterのロゴ
(画像:Connectivity Standards Alliance)
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 CSAは「Zigbee Alliance」という名称で、近距離無線通信規格「Zigbee」の規格策定と普及活動を2002年から行ってきた。2019年12月に米Amazon. com(アマゾン・ドット・コム)や米Apple(アップル)、米Google(グーグル)と共同で、新たなロイヤルティーフリーなコネクティビティー規格を策定する「CHIP:Connected Home over IP」と呼ぶプロジェクトを開始した ニュースリリース 。2021年5月にZigbee Allianceから名称をCSAに改めるとともに、CHIPで策定中の新たなコネクティビティー規格を「Matter」と呼ぶことを発表した ニュースリリース 。この時にはMatterの仕様は2021年下期に公開予定とされていたが、その後CSAは公開時期を2度にわたって延期した。上述したように、2022年10月4日にようやく公開の運びとなった。

 Matterのようにスマートホーム通信を狙った規格(家庭向けのIoT(Internet of Things)規格)にはAppleの「Apple HomeKit」、Googleの「Google Home」、Amazon.comの「Alexa」、米Intel(インテル)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)らが立ち上げた「OIC:Open Interconnect Consortium」の「IoTivity」、米Qualcomm(クアルコム)らが中心の「Allseen Alliance」の「AllJoyn」など多数が存在する。しかし、いずれも市場のごく一部での普及にとどまり、規格同士の相互接続性の欠如や提供される機能の相違などもあって、いまだに家庭向けの標準的なIoT規格と呼び得るものは存在しない。家庭向けのIoT規格で覇権を握りたいという思惑で各社はおよそ10年近く主導権争いを展開してきたが、「特定の企業の規格が家庭向けIoT機器の標準規格になるのは不可能」という結論に達したようだ。実際、上述のCHIP創立メンバーのいずれもが自社規格の普及に注力してきたことを考えると、主導権争いよりも相互接続性確立のほうが重要であると考えを改めたと思われる。