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 ヤマハ発動機は2022年11月11日、2輪車の安全性を高めるビジョン「人機官能×人機安全」を定めたと発表した。合わせて要素技術として、自動ブレーキ技術「レーダー連携ユニファイドブレーキシステム」、低速時の安定性を高める「二輪安定化支援システム(Advanced Motorcycle Stability Assist System、AMSAS)」などについて説明。乗員の操作を優先する点で、「4輪車の自動運転や自動ブレーキの考え方とは一線を画する」(取締役上席執行役員技術・研究本部長の丸山平二氏)と述べた。

 人機官能×人機安全の基本は、乗員と2輪車が協調して補い合う形で安全性を高めるとする考え方。「技術」「技量」「つながる」の3カテゴリーで構成する(図1)。このうち「技術」は2輪車や道路交通システムによる乗員のアシスト、「技量」は乗員に対する安全知識提供や運転技術向上のアシスト、「つながる」は人と機械の連係やクラウドを通した交通インフラとの連係を指す。レーダー連携ユニファイドブレーキシステムやAMSASは「技術」カテゴリーの要素になる。

図1 安全ビジョン「人機官能×人機安全」
図1 安全ビジョン「人機官能×人機安全」
説明者は取締役上席執行役員技術・研究本部長の丸山平二氏。(写真:ヤマハ発動機)
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乗員操作の不足分のみをアシスト

 レーダー連携ユニファイドブレーキシステムは、2023年夏以降に発売予定の「TRACER9 GT+」へ搭載する予定で、ミリ波レーダーによって周囲の4輪車などとの距離をモニターしながらブレーキをアシストするシステム。接近しすぎを予測した際に、システムはまず乗員にアラートを出して対応を促し、乗員のブレーキ操作が不足の場合に限って不足分だけをアシストする。そのとき、前輪と後輪でブレーキ力の配分を適切に保ち、乗員の姿勢を崩さないようにする。

 同じような状況でも「4輪車であれば、自動的にブレーキをかけて車両を停止させるところまでできるかもしれないが、2輪車で停止するまでブレーキをかけようとすると転倒の危険がある」(丸山氏)。コーナー通過時にはさらに危ない状態になる可能性がある。「我々の考え方はあくまでも人間の操作が優先で、足りない部分を機械が補って安全な状態を保つこと」(同氏)を強調する。 

 同氏は「2輪車は乗員が安定して操ることで初めて成立する乗り物」(同氏)と、4輪車などに比べて機械と乗員がより密接に関連していると指摘。乗員が関与しない形での完全自動運転や完全停止を目指すブレーキシステムのような方向とは、2輪車向けの安全装備の考え方は異なるとした。「ただしヤマハ発動機の他の製品では、例えば船や4輪バギー、ゴルフカートなど停止時に自立できるものがあり、これらについては完全自動運転の取り組みを進めている」(代表取締役社長の日髙祥博氏)とも説明した。