ベルギーの先端エレクトロニクス研究機関imecは、イタリアのベネチアで開催された超音波に関する国際シンポジウム「IEEE Ultrasonics Symposium」(2022年10月10日~13日に開催)で、フラットパネルディスプレー(FPD)加工技術で作製した圧電マイクロ超音波トランスデューサー(pMUT)アレーを発表した。FPD加工技術を用いてディスプレー上に超音波アレーを作製することで、超音波による空中触覚において新たなユーザー体験を提供できるという。
例えば、窓ガラス全面に同アレーを作製し、近くにいる人の体全体に触覚を与えたりできる(図1)。imecは空中触覚や生体モニタリングなどの用途に向け、現在、500のディスプレーメーカーと交渉をしているという。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって非接触インターフェースのニーズが高まっているが、同インターフェースは操作時に触感のないことが使いにくさの原因の1つになっている。そこで、圧電素子が発する超音波によって空中で手に触感を与える技術などが開発されている(図2)。
圧電素子を使うシステムは高い圧力を与えることができる点がメリットである。しかし、超音波振動子の周波数が高いため空中での吸収が大きく、数十cmという短い距離でしか使うことができない。また、シリコン加工の技術を使って作製すると、チップの上に貼り付ける関係からサイズの制約が出てしまう。一般的には2cm角程度のサイズでしか作製できず、空中触覚を実現できる範囲も限られる。
そこで、imecは距離が離れていても圧力が高く、かつ広い範囲で空中触覚を実現できる超音波アレーを開発した。ポイントは、空中での吸収が小さい低周波振動を発生するとともに、FPD加工技術を使うことで大面積に造れ、かつ高い音圧を発生できる点にある。