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 三菱電機は、レーザー加工機の最上位モデルである「GX-Fシリーズ」について、性能をアップグレードする新技術を毎年提供する方針を明らかにした。ユーザーは導入済みの本体に新たなソフトウエアやハードウエアを付加するだけで最新の加工技術を利用できる。継続的に生産性を向上できる製品設計で差異化を狙う。

GX-Fシリーズの新製品「GX-F120」
GX-Fシリーズの新製品「GX-F120」
(写真:日経クロステック)
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 GX-Fシリーズは、三菱電機製のファイバーレーザー発振器や人工知能(AI)を搭載した2次元レーザー加工機。2019年から販売している。このたび、同社は同シリーズの新戦略「GX-F Evernext Strategy」を発表した。戦略の柱は2つ。1つは性能のアップグレード。レーザー加工に関する最新技術を毎年提供し、導入済みのレーザー加工機の性能を更新できるようにする。もう1つは拡張可能な自動化システム。レーザー加工機とセットで使う自動化システムを拡張・更新できるようにする。「Evernext」は造語で、「常に進化する」といった意味を込めた。

 従来は最新の加工技術を利用するにはレーザー加工機を本体ごと買い替える必要があった。本体の耐用年数は10年前後のため、その間は加工技術が進歩しても購入済みのレーザー加工機に反映するのが難しかった。既存のレーザー加工機をアップグレードする形で新技術を提供する取り組みは「業界では珍しく、競合他社は行っていないだろう」(同社担当者)。新技術は基本的に有料で提供する。

 2023年度に提供する新技術は、AIを活用した制御技術「AIアシスト2.0」と厚板向けに最適化した切断技術「Mz-Power」の2つ。AIアシスト2.0は、現行のAIアシスト機能を進化させたもの。従来と同様に音・光センサーから加工の良否判定が可能で、アルゴリズムを改良したことで判定精度が向上した。加えて、加工速度と焦点位置を新たにリアルタイムに調整できるようになった。生産性や加工安定性の向上が見込める。

GX-F120で加工する様子
GX-F120で加工する様子
(写真:日経クロステック)
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 Mz-Powerは高炉材厚板や表面が錆(さ)びた板材などのレーザー切断を可能にする技術。レーザー発振器や加工ヘッドなどを制御し、厚板に最適なビーム特性や加工パラメーターになるように開発した。これまで厚板はガス溶断やプラズマ切断で加工していた。従来の加工法では粉じんや廃液が出るため、作業者や環境に負荷がかかっていた。レーザー加工に置き換えると、そうした負荷を減らせる。

Mz-Powerを使って切断した難加工材
Mz-Powerを使って切断した難加工材
板厚25mmのSS400(高炉材)、SN490C(高炉材)、SS400のショットブラスト材、SS400のジンクプライマー材の4種類の難加工材を高品質に切断できることを示した加工サンプル。(写真:日経クロステック)
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