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 2022年12月5日、航空法の一部改正によってドローンの「レベル4飛行」、つまり「有人地帯(第三者上空)における補助者なし目視外飛行」が解禁された。期待されるのはドローン活用の裾野の拡大だ。

 安全性などの課題から都市部での本格的な飛行はまだ先の話だが、ドローンの産業利用に向けた大きな一歩である。従来、レベル3飛行(無人地帯、補助者なし目視外飛行)では個別の許可承認をその都度取得することで飛行が可能だったが、今後は一定の条件(第二種機体認証および二等操縦者技能証明*1)を満たせば個別の許可承認が不要になる。

*1 今回改正された航空法では、レベル4飛行において安全性を担保する仕組みとして、「機体認証制度」と「操縦者技能証明制度」の2つが新設された。機体認証には、レベル4飛行が可能な「第一種機体認証」と、それ以外の「第二種機体認証」があり、技能証明制度にはレベル4飛行が可能な「一等資格」と、それ以外の「二等資格」がある。

 そんな活用の拡大を見越して、KDDI傘下のKDDIスマートドローン(東京・港)は同日、ドローンにおいて衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を活用すると発表した。Starlinkは米SpaceX(スペースX)が地球低軌道に配備する3000基以上の小型衛星を使った高速・低遅延のインターネットサービス。KDDIは2022年12月1日から静岡県熱海市の初島で、それをau通信網のバックホール回線として利用する基地局の運用を開始した。

図1 Starlinkをバックホール回線として利用
図1 Starlinkをバックホール回線として利用
地球低軌道に3000基以上が配備されているStarlink衛星のネットワークをau通信網のバックホール回線として使う(出所:KDDIスマートドローン)
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 ドローンは現在、山間部や島しょ地域での物流や点検、測量などに使われることが多い。auの4G LTE基地局の人口カバー率は99.9%ではあるものの、ドローンが飛行する人が住んでいない場所では電波が入らないことも多い。

 そこで、こうした地域にStarlink対応の基地局を設置することで、飛行ルートを確保する。例えば、人が住んでいる地域間を結ぶ日用品や医薬品の配送、山間部や島しょ地域の建設現場に人を派遣せずに遠隔からドローンで監視する作業などで使えるとしている。

 KDDIスマートドローンと大林組は2022年11月9日に、三重県伊賀市で建設中の川上ダム本体建設工事においてドローンを活用した監視および測量に関する実証を行うと発表しており、まずはここでStarlinkを使用する。

図2 まずはダム建設現場で活用
図2 まずはダム建設現場で活用
auの4G LTE電波が入らない大林組のダム建設現場で、Starlinkを活用したドローンによる無人監視・測量実証を行う(出所:KDDIスマートドローン)
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 具体的には、Starlink対応の基地局で現地をモバイルエリア化。ドローンは現場に設置した充電可能な専用ポートから遠隔制御で自律飛行(レベル3飛行)をしながら機体に搭載したカメラの映像をLTE網でリアルタイム配信。撮影した静止画はポートに着陸後に自動でクラウドにアップロードされ、解析に使用できるという。

 「Starlinkは人が住んでいない山間部などをドローンの飛行ルート化するのにかなり有効だ」とKDDIスマートドローン社長の博野雅文氏は話す。