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 「国際宇宙ステーション(ISS)は2030年で運用を終了してしまう。でも、宇宙に経済圏をつくるためには実際に人が行ったり、モノを置いたりする場所が必要。今のところ日本では、『ポストISS』を見据えた具体的な動きがないことがきっかけだった」

 宇宙開発系スタートアップのDigitalBlast(デジタルブラスト)は2022年12月12日、日本初の「民間宇宙ステーション(CSS)構想」を立ち上げたと発表した。同社CEO(最高経営責任者)の堀口真吾氏は、スタートアップがこの壮大な構想を打ち出した背景をこう語る。同社は米国の競合の状況を鑑み、最初のモジュールの打ち上げを2030年までに、早ければ2028年に実施したいとしている(図1)。

図1 DigitalBlastが発表した民間宇宙ステーションのイメージ
図1 DigitalBlastが発表した民間宇宙ステーションのイメージ
最大6人が搭乗でき、容積は国際宇宙ステーションの7割程度になるという(出所:DigitalBlast)
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 日本政府は2022年11月に、2030年までのISSの運用延長に参加することを表明したが、ポストISSは今のところ白紙の状態だ。一方、日本はISSの「きぼう」日本実験棟(JEM)における開発・運用実績を多く保有する。デジタルブラストはこの技術・知見を生かしながら、日本国内の民間主導でのCSS構築を目指すという。「意気込みとしては、要素技術も含めて日本の技術で固めたい」(堀口氏)。

 CSSは通信やドッキング機構、クルー居住施設などの機能を持つ居住・コアモジュール(Habitat & Core Module)、サイエンスモジュール(Science Module)、エンタメモジュール(Entertainment Module)の3つで構成する。

 サイエンスモジュールは、宇宙実験の環境や資源採取にかかわる機能を提供する。デジタルブラストが現在開発を進めている小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ(アマツ)」などの宇宙実験装置を設置し、企業・研究機関に対して実験環境を提供するとしている。

 エンタメモジュールは、CSSに滞在するクルー向けのエンターテインメントとしての多目的空間の提供に加え、VR(仮想現実)やメタバースを活用して地上の一般消費者が宇宙空間を楽しむことができるサービスを提供する。「例えば無重量空間にいるクルーと地上にいる人が仮想空間上でサッカー対決をするような新スポーツを創造できれば面白い」(堀口氏)。