キヤノンは2022年12月20日、生産ライン上を毎秒10mで流れる部材の移動量や速度を高精度に測れる非接触測長計「PD-710」を2023年1月上旬に発売すると発表した。新しいレンズの採用などにより、測定できる速度範囲を従来機種の2.5倍に拡大。トイレットペーパーを高速で搬送する製紙業界のほか、高速でプレス加工をする電気自動車(EV)のモーター部品の製造ラインなどで活用を見込む。
新製品では、測定可能な速度を10m/秒にまで高速化するために、新レンズを搭載するとともにデータを処理するアルゴリズムを新開発した。具体的には「今までよりも光学倍率を下げて、引きで測定対象を見るようにした」(同社担当者)という。アルゴリズムは、新たな光学倍率に対応するものを開発した。
対応可能な速度が上がったことで、ターゲットとするユーザーを従来のプレス加工業界から製紙業界などに拡大できる。例えば、トイレットペーパーは毎秒8~10mの速さで製造ラインを流れているため、4m/秒の範囲で計測可能な従来機種「PD-704」では対応できなかった。他にもEV用モーターの主要部品であるモーターコアを製造するプレスラインには、生産性向上のために搬送速度が最速6m/秒と超高速になるものもある。そうしたラインでの送り量などを測れるようになる。
製紙業界にとっては、新製品を使うことで、ティッシュペーパーや段ボールなどを正確な長さで切断し、原材料のムダを減らせるというメリットがある。同業界では従来、紙の巻き取り装置の回転量などから大まかな長さを計算して、切断していたという。誤差で規定の長さを下回らないように、規定より少し長い紙を納めていた。輸入パルプの価格や物流のコストが上昇するなか、「原材料のムダを減らす動きがある」とキヤノンはみる。
PD-710の測定方法は従来機種と全く同じ。白色LED光を生産ライン上の部材などに照射。反射光をラインセンサーで受光し、部材表面の長さ5mmほどの線上にある微細な凹凸を1秒間に約4000回、1次元画像として取得する。連続的に取得した画像はキヤノンの独自技術「プロファイルマッチング方式」で処理する。同技術は、連続的に取得した1次元画像の凹凸情報を比較して一致度の高い箇所を検出するもの。同じパターンが現れる位置のずれを見ることで、部材の移動量や速度変化を算出できる。