富士通と東海大学の共同研究グループは2022年12月21日、冷凍マグロの品質を非破壊で評価する手法を世界で初めて開発したと発表した。超音波検査で取得したデータをAI(人工知能)で処理することによって、死後硬直が進んだ状態である鮮度不良を検出する(図1)。国際化が進むマグロ流通において、冷凍マグロの身を切ることがなく、その価値を維持しながら、誰でも品質評価ができるシステムの構築が期待される。
マグロの漁獲量は、日本の生食文化が世界に広まったことによって拡大を続けており、ここ30年で約2倍の年間約600万トン、市場規模は世界で年間5兆円規模に成長しているとみられている。一方で、品質評価については熟練者が尾付近を切って断面の状態から脂の乗り具合や鮮度を判断する「尾切り選別」という属人的な手法が以前から用いられている。
尾切り選別については、熟練者頼みで日本以外の地域では適用が難しい、尾の付近以外の部位の品質評価ができないなどの課題がかねて指摘されていた(図2)。
今回、富士通と東海大学が共同開発した手法を使えば、所定の超音波を冷凍マグロに当てるだけで鮮度不良を簡単に検出できる。「現状、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域などでは品質が高いマグロもツナ缶などに加工されている。今回の手法によって熟練者がいなくても品質を正しく評価できれば、ツナ缶より4倍程度流通価格が高い生食用として提供できるかもしれない。市場拡大に貢献できる可能性がある」と富士通 研究本部人工知能研究所自律学習プロジェクトの酒井彬氏はインパクトを語る。