帝人と富士通は2023年1月19日、リサイクル素材の価値を高める取り組みの第一歩として、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製自転車フレームのリサイクルにまつわるデータを可視化する実証プロジェクトを行うと発表した。富士通のブロックチェーン(分散型台帳)を用いたサービスを実装し、サプライチェーン(供給網)を担う各社が材料や環境負荷に関する情報を提供する。リサイクル活動の透明性を高める仕組みを作り、将来的には航空産業や自動車産業など炭素繊維を使う他業界にも展開させたい考えだ。
帝人と富士通は、2022年7月からリサイクル素材の価値を高めるプラットフォームを造るプロジェクトを共同で進めている。その一環で、自転車フレームを対象として温暖化ガス(GHG)排出量や資源の由来を可視化する技術を検証する。実証プロジェクトの期間は2023年1~3月。帝人と富士通に加えて、工場端材由来のリサイクル炭素繊維を活用して自転車フレームを造るドイツV Framesと自転車メーカーのドイツAdvanced Bikesが参加する。
実証プロジェクトで検証するのは主に2点。1つはV FramesやAdvanced Bikesが自社内の各工程における環境負荷情報をアップロードできるか。もう1つは、材料が加工されていく過程の追跡データである「トレースデータ」の可視化に需要があるかだ。炭素繊維を製造する帝人は各工程の環境評価などを支援する。富士通はブロックチェーン利活用サービス「Fujitsu Track and Trust」を使ってプラットフォームを実装し、トレースデータを可視化する。
将来的には、実証プロジェクトで確立したプラットフォームを活用し、あらゆる工程における資源の所在や状態、環境負荷のデータを可視化する。例えば、V Framesは使用済みのCFRP製自転車フレームを新しい自転車フレームにリサイクルする「フレームtoフレーム」にも取り組んでいる。こうした資源循環に携わる販売店や自転車のユーザー、リサイクル業者など全ての関係者が情報をアップロードする想定だ。資源循環をデータによって証明できれば、商品のブランディングやESG(環境・社会・企業統治)投資の評価などに活用できる。