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 ロームは、車載液晶ディスプレー(LCD)のLEDバックライトを駆動するドライバーICの新製品「BD82A26MUF-M」(図1)を発表した ニュースリリース 。6チャネル構成品で、10インチ以上と大型の車載LCDに対応できる。同社が2019年8月に発表した6チャネル構成の車載LCD向けLEDドライバー「BD81A76EFV-M」(以下、既存品)*の強化品と位置付けられ、高出力化したり、扱える調光方式を増やしたりした。

図1 今回発表の新製品など
図1 今回発表の新製品など
左から、新製品で4チャネル構成の「BD83A04EFV-M」(昇圧用MOSFET内蔵)および「BD83A14EFV-M」(同MOSFET内蔵なし)、新製品で6チャネル構成の「BD82A26MUF-M」、開発中製品で4チャネル構成の「BD83A14MUF-M」である(写真:ローム)
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 同社によれば、ADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメントシステムの高度化により、車載ディスプレーの大型化が進んでいる。この流れに沿ってロームは今回、10インチ以上と車載では大型のLCDのLEDバックライトを駆動する新製品を投入した。新製品は、既存品に比べて高出力になった。例えば、1チャネル当たりの最大出力電流は120mAから150mAに増えた。これによって駆動するLEDの明るさがアップする。また最大出力電圧は40Vから50Vへ増加した。これによって駆動できるLEDの個数が増える。

 さらに、新製品では扱える調光方式が増えた。既存品が扱えるPWM(Pulse Width Modulation)調光だけでなく、新製品ではDC調光が可能である。PWM調光はLEDバックライトでは一般的な手法で、超高速でLEDのオンオフを行う。LEDの点灯時間(パルス幅)の長短により、LEDに明暗をつける。色味の変化は起こりにくいが、明るさを変えた時にちらつきが発生してしまうことがある。一方、DC調光ではLEDに流す電流の量により、LEDに明暗をつける。PWM調光のようにLEDを点滅させないため、ちらつき発生のリスクが低い。一方で、低い電流値ではLED自体に色度推移が発生するため、色味を気にする仕様では注意が要る。

 新製品のPWM調光の調光率は1対20000で、既存品で初めて採用した同社独自の「シームレスPWM」技術を採用した(図2)。この技術では、一般的なPWM調光でちらつき発生の原因となる、低輝度から高輝度まで電流帰還モードの切り替えが発生しない。そのため、ちらつき発生リスクは低く、アプリケーションの信頼性が向上するという。新製品の動作温度範囲は-40~+125℃。パッケージは5.0mm×5.0mm×1.0mmのVQFN32FBV05である。車載半導体ICの品質規格「AEC-Q100 グレード1」に準拠する。

図2 シームレスPWM(下)は一般的なPWM調光(上)に比べてちらつきが起きにくい
図2 シームレスPWM(下)は一般的なPWM調光(上)に比べてちらつきが起きにくい
(画像:ローム)
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