AIベンチャーのPreferred Networks(PFN)の子会社が、物を運ぶロボットを家庭向けに発売する。キャスター付きの専用棚をけん引するタイプで、音声で指示すると棚に入った食器や本などを所定の場所に運ぶ(図1)。搬送ロボットはこれまで、物流倉庫で商品を入れた棚を運んだり、飲食店で料理を配膳するといった産業用で活用されてきたが、いよいよ家庭用にも入ってきた形だ。価格は22万8000円(税込み)から。PFNからスピンアウトし、ロボット開発を手掛けるPreferred Robotics(PFRobotics)が、商品名「Kachaka(カチャカ)」として2023年5月に発売する。
今回のロボットは、各種センサーで障害物を認識・回避できる。家庭内では、ロボットが転倒したり物が落ちたりするリスクに備え、ロボットが運ぶ棚は専用品を用意し、そこに収納できる物を運ぶ。物流倉庫などでは、重さ数百kg以上、高さ数mほどの棚を運ぶケースがあるが、今回のロボットが運べるのは、専用棚の重さを含めて最大20kg。棚は2段と3段の2種類あり、高さは最大で約70cmと小型のワゴンほどの大きさである。走行速度は人が歩くよりも遅く、最大で秒速40cmである。
搬送ロボットの物を運ぶ方式には、けん引式と持ち上げ式の主に2種類あり、同社は今回、けん引式を採用した。専用の棚には車輪を設け、ロボットは棚の下に潜り込んで棚の底部と連結した状態で、引っ張って運ぶ(図2)注1)。これに対して、米Amazon.com(アマゾン)などが物流倉庫で活用しているロボットは持ち上げ式を採用している。ただ、持ち上げ式ではロボットの上に棚を載せているだけのため、急停止した場合には棚が倒れるリスクがあり、家庭内ではこれを避けられるようけん引式とした。
家庭内の狭い空間でも小回りが利くよう、ロボット本体も小型化する必要があり、これにもけん引式が向いていた。持ち上げ式では、棚などの搬送物の質量がロボット側に全てかかるため、持ち上げるためのモーターは大きなトルクが必要でロボット本体は大型化しがちだ。今回のロボットは専用棚の車輪を床に接地させながら移動しているため、ロボット側には実質、搬送物の重さがかからず小型化できた。