「商品づくりが大きく変わる」
富士通ゼネラルで家庭向けエアコンの開発を指揮する、同社空調機事業統括本部 空調機商品企画部主席部長の平律志氏はこう話す。経済産業省が2022年5月末に告示を公布し、同年6月1日から施行した家庭用エアコンの新たな「基準エネルギー消費効率(省エネ基準)」がその理由だ。富士通ゼネラルは2023年2月14日に、報道陣向けに新省エネ基準の説明会を開催した。
経済産業省は、石油危機を契機に1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下、省エネ法)」を基に、エネルギー消費効率を特に改善する必要がある機器について、省エネ基準の目標値を設定している。
冷暖房は家庭のエネルギー消費量の中でも約3割と大きな割合を占める。しかし、エアコンの省エネ基準は2006年に改正した基準から長年変わっていないことなどを受け、審議会は省エネ基準の見直しについて議論した。その結果、2022年2月に新たな目標年度や省エネ基準などを示した報告書を取りまとめた。新基準の目標年度は2027年度に置かれており、各メーカーは目標達成に向けて開発に取り組んでいる。
今回の省エネ法における目標基準値の改正には大きく3つの変更点がある。1.省エネ目標基準値の引き上げ、2.寸法区分の廃止、3.寒冷地区分の新設、である。1については、エアコンの省エネ指標に使われるAPF*(通年エネルギー消費効率)が従来に比べて引き上げられ、最大で34.7%の改善が必要となる(表)。
2については、これまで室内機の寸法で分類されていたが、寸法規定(室内機の横幅800mm以下かつ高さ295mm以下の機種)の方が、寸法フリー(寸法規定以外の機種)よりも省エネ基準の目標値が低かった。多くの企業が目標値の低い寸法フリーでの開発主体となったため、その区分を廃止した。
3は、寒冷地では積雪や低温に起因する故障防止の設計や、暖房極低温状態(-7℃)などの仕様が必要となり省エネ性能が下がるため新たに区分を設けた。